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【社内雑談】Pixel 10aも当然ミリ波非対応
(と言いつつ衛星SOSの話題)前編

はじめに

引っ越し以前からこのブログを読んでいる方ならご存じかと思いますが、我々は自称「ミリ波応援隊」として、ひたすら携帯電話のミリ波に関する記事を書き続けています。

しかし、残念ながらミリ波対応端末は減る一方。そして、先日の2026年2月18日に、GoogleがPixel 10aの発表をしました。カメラの出っ張りが無く、背面までフラットな筐体は非常に魅力的に映ります。2025年に販売した端末の中で、唯一ミリ波に対応(Pixel 10 Fold)したGoogleの最新機種は、はたしてミリ波に対応しているのか?そして、Pixel 10aはどういった無線的な機能を持っているのか?ミリ波応援隊の我々が予想したいと思います。

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Google Pixel 10a
画像提供:Google The Keyword

まあ、対応していませんよね・・・

社員A(以下A): さて、GoogleからPixel 10aが発表されました。アメリカでは3/5発売のようですが、日本の発売、価格は(記事を書いている段階では)未定となっています。

社員B(以下B): 499USドルという価格は、結構凄いよね。Pixelの8a、9aと同じ価格※1だけど、メモリ高騰、いや爆騰のこのご時世に価格据え置きということは、ちゃんと数量確保できていたということなんだろうね。

A: そうですね。PCとかは軒並み値上げ、いや爆上げしていますから、据え置きってだけで凄いことだと思います。さて、我々ミリ波応援隊としては、このPixelのミリ波対応が気になるところなんですが?

B: 一言で言えば、全モデルミリ波非対応。USモデルも非対応。残念でした。

A: まあ、そうなりますよね。そもそも、日本だとPixel 10 Proですら対応していないのだから、廉価版の10aが対応しているわけがないです。USモデルも非対応というのも、USの9aが対応していないことから、おおよそ予想はできました。

B: その通り。じゃあ、今日の記事はこれで終わりということで。

A: いや、ちょっと待ってくださいよー。これじゃあ、記事になりませんよ。

B: 仕方ないな。じゃあ、もう少しPixel 10aについて話すよ。

A: お願いします。

B: Pixel 10aの巷の評判は「ほぼほぼPixel 9aと同じ」だ。Pixelの廉価版であるaシリーズは、いつもなら「SoCは無印と同等」というのが売りだった。例えば、Pixel 9aならPixel 9無印と同じTensor G4が使われていたし、Pixel 8aならPixel 8無印と同じTensor G3を使用していた。

A: AIが売りのPixelシリーズだと、SoCの世代がAI機能の世代となるため、他のスマホよりSoCの世代が重要だったりするんですよね。

B: そうなんだ。それで、Pixel 10無印はTensor G5なんだけど、Pixel 10aは一世代前の、つまりPixel 9と同じTensor G4を使っているんだよ。

A: ということは、Pixel 9aともSoCが同じ世代というわけですね。

B: それが、ほぼPixel 9aと言われている所以だ。もともとPixelはカメラとかメモリで差別化するスマホじゃないから、SoCが同じだと中身も同じになっちゃうのは仕方の無いところ。だから、Pixel 9aからお値段据え置きも「中身同じだし当然」という見方をする人もいる。私は、頑張ったと思った方だけど。

A: そうですね。見た目はカメラの出っ張りがないフルフラットになって良い感じですが、中身はPixel 9aと言われちゃうと、確かに購入の時考えてしまいますね。一応、ディスプレーのガラスとか強化されているみたいですが、正直そのへんは私にはどうでも良いですね。

B: 電波的な話をするとPixel 9aと10aで一つ大きな違いがある。それが、衛星SOSの対応だ。Pixelは9シリーズから衛星SOSに対応しているんだけど、9aだけは対応していなかった。Pixel 10aのSoCはTensor G4で旧世代なんだけど、モデムだけはPixel 10無印と同じSamsung製「Exynos Modem 5400」を使用している(らしい)。だから、衛星SOSに10aから対応するようになった。

A: なるほど、Pixel 9aと10aは「モデムの違いからくる衛星SOSの対応の違い」という微妙な差があるんですね。

衛星SOSとは何か?

B: 微妙と言うな。それなりに大きな違いだ。ちなみに、衛星SOSを知らない人のために説明しておくと、衛星回線を使って、119番(救急、消防)の様な緊急サービスへメッセージを送る機能だ。携帯電話が圏外であっても緊急通報ができるから、特に登山とかする人には必須の機能だ。

A: でも、緊急SOSは音声通話では無いんですよね。テキストメッセージなんですよね。

B: そう。4Gや5Gといった地上の携帯電話の電波では無く、宇宙にある衛星を介して通信するので、音声のようなリッチな通信はできない。

A: イーロン・マスクのStarlinkは、100Mbpsを超えるような通信ができるじゃないですか?音声なんてそれと比べたら大したことないんじゃないですか?

B: いや、あれは大きなアンテナが必要でしょう。最新のものでも約40cm × 60cmのアンテナが必要なんだから。あのサイズがあるからこそ高速に通信できる訳で、決して持ち歩きは視野に入れていないからね、Starlinkは。一方の衛星SOSは、あくまでスマホだけで完結する衛星通信だから、そこの違いは大きいんだよ。

A: スマホだけで高速通信できる訳じゃ無いんですね、残念。

B: 緊急SOSメッセージは、すでにAppleが2022年発売のiPhone 14以降の全てのモデルで対応していて、実績がある。Pixelは9シリーズから後追いで対応、という感じだね。iPhoneは16eとかAirとかの端末も含めた全端末で対応していたけど、Pixelは9aが対応していないなどばらつきがあったけど、10aの対応でいよいよPixelも全端末対応になるのかな、と思っている。

A: むむ?この話になんか既視感が・・・ iPhone 16eの時の話でも出てきたような。あ、そうだ。iPhone16eがApple自家製モデム(Apple C1)を搭載してきたときに、ミリ波は切ったけど衛星SOSには対応していて、Appleが重視しているのはミリ波より衛星SOSの方だ、という話とそっくりじゃないですか!

B: あら、わかった?そう、Pixelも9aも10aもUS版含めミリ波は非対応になっている。言うなれば、ミリ波対応端末は減っていくけど、一方で衛星SOSは全機種対応に進んでいるってこと。つまり、Google”も”重視しているのはミリ波では無く衛星SOSってことだ。ミリ波応援隊としては残念だけど、これが現実。

A: あー、そういう方向ですか。

B: さっきも言ったけど、日本で携帯圏外って、登山でしか行かないような山の中か海の上しか無い※2んだけど、アメリカだと平気で都市間が圏外だったりするらしいからね。砂漠を突っ切る道路とか。自分は行ったこと無いけど、有名な観光地でもあるデスバレー国立公園の中は未だ圏外多発らしい。そりゃそうだ。長野県ぐらいの大きさの公園に、ホテルや公園の関係者の300人程度しか住んでいないんだから。だけど、デスバレーは世界で最も暑いとされる場所だから、観光客は車が故障しただけで死を覚悟しなければならない。携帯が圏外となると衛星SOSは命綱として非常に重要でしょう。

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Google Gemini作成

A: 確かに、ミリ波は通信が早くなるだけで、機能として無くても問題ないですけど、アメリカの広大な大地では衛星SOSの有無が生死を分けることもあるでしょうからね。

B: そういうことです。だだっ広いアメリカに住む人達にとって、どちらが重要かは明確だって事だ。

A: よく分かります。日本で緊急SOSが必要なのは、登山者と船乗りぐらいしかいないとはいえ、そもそも日本にはミリ波の基地局がないのだから、Googleにとってはミリ波と衛星SOSでは比較対象にもなっていないかもしれませんね。

B: あ, 重要なことを言うの忘れた。Pixelの衛星SOSだけど、まだ日本非対応だからね。日本は、どちらも関係無い。

A: え?今までの話は何だったんだ・・・

衛星会社の違い

B: さて、Google Pixelの衛星SOSが日本で使えない理由は公表されていない。しかし、使えない理由があるとしたら2つだ。そして、それを知るためにはiPhoneの衛星SOSとPixelの衛星SOSの違いを理解しなくてはならない。

A: 両社でそんなに違いがあるんですか?

B: 全く違うとまではいわないけど、かなり違う。まず、iPhoneの衛星SOSはGlobalstarという会社のサービスを使っている。Globalstarは2000年にサービスを開始した衛星電話の古参で、低軌道衛星を大量に使う衛星コンステレーションという方式でのサービスになる。日本でも有名なイリジウムに近い会社だと思ってくれ。

正直、イリジウムと同じようにGlobalstar社の経営も苦しかったのだが、iPhoneの衛星通信を行うにあたり、Appleが大株主になり、さらに追加11億ドル(合計15億ドル)もの投資を行い、今に至る。つまり、死に体だった衛星電話会社をAppleが半ば買い取ったような形だ。だから、現在Globalstarの帯域の85%はApple専用に割り当てられている※3。言うならば、iPhoneの衛星通信はApple自前の通信だ。

A: なるほど。Appleは衛星電話を会社ごと抱えて、それで衛星SOSを行っているというわけですね。

B: もともとGlobalstar自体が日本で無線免許を取得し衛星電話サービス提供をしていたから、iPhoneの衛星SOSも、その流れで使えることとなった。

A: iPhoneをGlobalstarの端末と見なせば良いだけですから、問題ありませんね。

B: 一方、Pixelの衛星SOSはSkylo(すかいろ)という会社のサービスを使っている。ソフトバンクが出資した事から日本でもちょっとだけ話題になった会社なんだけど、そもそもこのSkyloという会社自体が、実は、私含む衛星業界の素人にはちょっと分かりづらい会社なんだ。Skylo自体は衛星を持っていないというところからスタートだからね。

A: え?どういうことですか。衛星を持っていない衛星通信の会社?

B: Skyloは、既存の衛星の帯域を一部借りてサービスしている。具体的にはインマルサット社のLバンド(1.5GHz帯)を借りている。

A: インマルサット?なんか、聞いたことがあるような。

B: インマルサットは、GlobalstarやStarlinkなんかがやっている衛星コンステレーションではなく、静止衛星※4による衛星電話サービスだ。もともとは、国連の要請で作られた国際海事衛星機構という非営利の政府間組織(IGO)で、飛行機とか国際船舶とかに通信サービスを提供するために作られた組織だ。衛星コンステレーションの携帯電話が出てくるまでは、ほとんど唯一の衛星電話サービスであったため、名前だけは聞いたことがある人というのも少なくないんじゃないかな?

A: 確かに、名前は聞いたことがありますね。

B: 日本ではKDDIがインマルサットのサービスを再販していたね。

その後、衛星電話を行う民間業者も出始めて、非営利の組織がわざわざサービスを提供する必要は無くなったとして、インマルサットの運用部分はイギリスの会社に売られて、1999年に民間企業になっている。その後、色々あり現在は米バイアサット社が持っているんだけど、いずれにしても民営化されたからSkyloの様な企業へ帯域を貸すサービスもできるようになった。

A: なるほど。Skyloの成り立ちは分かりました。ポイントはなぜ日本で使えないのか?ということなのですが。インマルサット自体はGlobalstarと同じように日本でもサービスしていたはずですし、iPhoneと同じように問題が出ないと思うのですが。

B: まず、インマルサットのサービスにはいくつかあって、周波数もいくつかある。今回のPixelの衛星SOSサービスはインマルサットIoT型と呼ばれるサービスになるんだけど、これの周波数が最初の問題。インマルサットIoTのアップリンクの周波数は1.6GHz帯なんだけど、これが電波天文とぶつかる. Globalstarも同じ状況だったんだけど、こちらはAppleが関わる前からすでに調整が付いていた。野辺山天文台から30km以内は、特定のチャンネルが使えない等の制限を掛けることで使えるようになっている。

一方でインマルサットIoTは、昨年6月にやっと電波法改正が行われ、昨年末ぐらいにPixel 10の衛星SOSの技適が通ったと報道※5されていた. というわけで、電波的に時間がかかってしまったというのが日本で使えない第一の理由。

A: この業界にいると良くある話ですね。何にしても、この辺りで時間がかかります。

次回予告

次回は、AppleとGoogleの衛星SOSシステムの違いからくる「第二の理由」の説明などをしていきます。また、次回をお楽しみに。

(担当M)

※1; 128GBモデル

※2; 北海道などの地域では都市間を結ぶ国道沿いでも圏外の場所が残るが、国土の広い国々と比べると、日本の携帯電話はその割合が非常に小さい。

※3; ロイター 2024年11月2日報道

※4; 赤道上空、約36,000kmの円軌道上にある衛星。公転周期が地球の自転周期(約23時間56分)と一致するため、地上からは空の一点に止まっているように見える。このため、アンテナの向きを固定できる放送・通信や気象観測に不可欠な「宇宙のインフラ」である。ただし、この性質を持つ軌道は「赤道直上の1ライン」しかないため、物理的なスペース(軌道スロット)と周波数は有限な資源である。国際電気通信連合(ITU)によって厳格に割り当て管理が行われている、非常に希少価値の高い「宇宙の不動産」とも言える。

※5; インマルサットIoT関連の技適(工事設計認証)は2026年6月30日付けで取得していたが、(発売機種バレを防ぐために)一定期間公開しない制度を使用していたため、報道は同年12月となった。