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【社内雑談】盛り上がってる?ミリ波 その1

はじめに

先日、KDDIとJR東日本から山手線の車両内で5Gミリ波のエリア化に成功というプレスリリースがありました。これ以外にも、いくつかのミリ波に関する発表が続いています。我々はミリ波応援隊として5Gミリ波を様々の形で取り上げてきましたが、いよいよ各社ともミリ波に本腰を入れるのでしょうか?

時代を先取る?我々が、いつものようにミリ波について忖度なく語っていくのですが、今回は基本に戻って「ミリ波の技術的な課題」について語るようです。今回はどんな話になるのでしょうか?

毎度おなじみではありますが、このブログはエンジニア個人が好き勝手に発信するものであり、所属組織(株式会社三技協)の公式の見解ではありませんので、あらかじめご承知置きください。

【社内雑談】盛り上がってる?ミリ波 その1 その2 その3

寂しいWireless Japan

社員A(以下A): なにか、ここ最近ミリ波に関するニュースが立て続けに発表されています。2026年はいよいよミリ波スタート、いや再起動の年となるのでしょうか?今日は、ミリ波応援隊として、ちょっと議論していければと思います。

社員B(以下B): 私もミリ波に動きがあるのかな?と思って期待して、久々にWirless Japanに行ったんだよ。

A: 今年(2026年)のWireless Japanは5月27日から29日まで、東京ビックサイトで開催していましたね。無線通信系単体としては日本最大で、かつ最も有名な展示会といってもよいですよね。

B: いやー、行ってびっくりしたよ。

A: そんなに、ミリ波が盛り上がっていましたか。

B: いや、その逆。会場のブースの少なさにびっくりした。例えば、ソフトバンクも楽天モバイルも出展していなかったからね。というわけで、Wireless Japanの過去の出展社数がどれぐらいだったか、調べてみたんだ。

A: どうでしたか?

B: コロナで2020年は中止になっているんだけど、その前は毎年300社程度出展していたらしいんだよね。

A: それで、今は何社ぐらいなんですか?

B: 今年は、ブースで80社程度かな。ブース内複数社展示での会社数を数えると100は超えると思うけど。

A: え?そんなに減ったんですか?

B: そうなんだよ。これは今年急に減ったというわけではなくて、コロナ以降に出展社が戻ってこなくて、こんな感じになっている。

参加人数も二万六千人程度。コロナ前の最盛期は五万を遥かに超えていたから、コロナ直後よりは増えたとは言え、コロナ以前と比べると大きく減っているね。

A: およそ半減とは厳しいですね。

B: しかもさ、サイズの大きなブースは主催者側ののXGモバイル推進フォーラムに加えて、NICT(情報通信研究機構)とか、総務省とか、Wi-SUNアライアンスとか、まあ、純粋な民間企業じゃないところばかり。

A: え?携帯電話事業者とか基地局メーカーとかそういうところは出ていないんですか?こういった展示会は、そういう会社が大型ブースを構えるという認識だったのですが。

B: NTTドコモとKDDIが出ていたけど、ソフトバンクと楽天モバイルは出ていなかったね。両社ともMWC※1は必ず出るのにね。

A: 日本の事業者なのに、スペインの展示会は出ても日本の展示会には出ない・・・

B: 更に言えば、無線機メーカーも出てないからね。エリクソン、ノキア、ファーウエイ、サムソンとかの外資だけじゃなく、NECとかも出ていない。

A: じゃあ、携帯電話関連の展示会という感じは、あまりしなかったですか?

B: しなかったね。会場にはByond 5Gとか6Gという単語もあったにはあったけど、やっぱり無線機メーカーとか事業者が大々的にアピールしていないと、なんだか実感がないというか。うーん、もうそろそろ6Gとかの話題が出てきてもいいんだろうけど、なかなか厳しいね。そもそも、5Gのマネタイズで躓いているからね。

ミリ波はどうだったのか?

A: それで、本題ですがWireless Japanではミリ波の扱いはどうだったんですか?報道にあるようなことが、大きく取り上げられていましたか?

B: KDDIとかドコモとか、ごく一部では取り上げられていたけど、残念ながら盛り上がっていたとは言い難いかな。ただ、今までに比べれば良いニュースが多かった。例えば、KDDIとドコモ、ミリ波エリアを効率的に拡大する共用中継器を開発というニュース。偉そうに上から言わせて貰うと、やっとスタートに立ったかなと思っている。

私はこのブログでも、常々「ミリ波の無線機は4社すべての電波が出せるようなものにすべき」と言っている。つまり、ミリ波は各社相乗りすべきというのが持論だ。やはり4社がバラバラに無線機を建てていたら、飛ばないミリ波だといくら建てても足りない。1台の無線機で4社分出すのが難しいのなら、4社別々の無線機でもよいから、とにかくミリ波だけは1箇所の基地局で4社の電波が出せるようにするのが望ましいと思ってる。相乗りなんてWi-Fiでは初期から問題なくできているんだから、携帯電話でもできないはずはない。

A: 言うならば基地局シェアリングですよね。理想は分かります。でも、私のこれまでの業界経験からすると、実際のところ実現は政治的にハードルが高いですよね。

B: もちろん普通に考えたらかなり難しいけど、トンネルとか地下鉄とかトンネル協会※2がまとめて建ててるじゃん。JTOWER※3もあるわけだし。今回のドコモKDDIの共用中継器だって、従来なら考えられなかったことでしょ?

A: そう言われれば、そうですが。

B: まあ、この相乗りに関しては、我々”ミリ波応援隊”としての夢ということで、今後も繰り返しアピールしていこうかな。

さて、冒頭の山手線の話に戻るんだけど、プレスリリースのタイトルは「国内初、屋外の基地局からのミリ波を車両内に引き込み、増幅して再放射」となっている。具体的に言うと、鉄道車両に外からのミリ波を受信して増幅する「中継器」を設置することで、列車内でもミリ波の電波が使用できるようになるという話。中を読むと、ガラスメーカーも増幅器メーカーもアンテナメーカーも関わる非常に大がかりな装置であることがわかる。でも、そもそもなんでミリ波だけそんな大層な装置が必要になるのかって話なんだけど、なぜだかわかる?

A: 何を今更。それは、ミリ波は周波数が高くて飛ばないからですよね。

B: うん、当然そうなるね。でもさ、この件しかり、共同中継器しかりなんだけど、こんな対策をわざわざやらなくちゃいけないというのは、全て結局のところ「ミリ波が飛ばない」ところから来ている話なんだよね。

よく考えてほしいんだけど、700MHzやら800MHzやらのプラチナバンドだけでなく、2.1GHz等の他の周波数では、こういった話になったことがないよね? だってさ、外から電波を出しておけば電車の中にも届くし、共同中継器なんてなくても一つの基地局で広いエリアをカバーできるし、そんな事必要ないんだから。

A: 鉄塔の共用はあっても、まさか屋外リピーター※4の共用なんて考えたことありませんでした。でも、ミリ波は周波数が高くて電波が飛ばないですから仕方ないですね。

B: そう、飛ばないんだけど、私が思うに「ミリ波が飛ばない」という言葉の意味を勘違いしている人も多いと思っているんだよね。実は、ミリ波は「遠くまで飛ばない」のではなくて、結果的に「遠くに飛ばない」んだ。

A: なんですか、その禅問答みたいなのは?

B: というわけで、いつもは「日本のケータイがミリ波に対応していない」みたいな話ばっかりしているけど、今日は「ミリ波は飛ばない」と言われている面倒な理由を紹介したいと思う。

A: おお、そういう企画ですか。じゃあ、よろしくお願いします。

「ミリ波は飛ばない」の正体

B: まず、一応ミリ波がなぜ距離を飛ばないとされているのか、基本的なところをおさらいしておきたいと思う。

A: 周波数の話ですよね?

B: そう。電波は遠くに飛ばすと減衰する、これは電波に限らず「波」であれば全て同じで、音であっても光であっても、なんなら海の波だって津波だって同じだ。

なぜ減衰するのか?というのをすごく簡単に説明すると、これは「波が広がる」という性質から来ているからとなる。この性質を私が説明するときは、いつもプロジェクターを例に出している。プロジェクターから出る光の明るさは一定。だけど、プロジェクターから近いほど投影された画面は明るい。そして遠くなるほど投影画面は暗くなる。

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距離の2乗に比例して減衰
画面一辺の長さは距離に比例するため、画面の面積は距離の2乗に比例する

A: そりゃ、当たり前ですよね。

B: そのかわり、プロジェクターから遠くなるほど画面は大きくなる。それで、考えてほしいんだけど、”プロジェクターから出ている光”という根っこの部分、すなわち光源は一緒なわけでで、それが単に広く引き延ばされているだけなのだから、投影画面全体で見れば光の総量としては変わらないよね? しかし、総量は一緒でも画面が大きくなると暗く感じる。そこで何が変わったのかと言えば、面積辺りの光の量、いわば「光の密度」だ。

A: 明るさは光の密度なわけですね。でも、画面全体で見れば光の総量が変わらないというのがミソなんですね、恐らく。

B: そうそう。画面の一辺の長さは距離に比例して長くなるので、画面の面積は距離の2乗に比例して大きくなる。光の総量は同じで、かつ面積が距離の2乗に比例するなら、「光の密度」は距離の2乗に比例して小さくなる。例えば、距離が3倍になれば、面積は9倍になる。その時、光の密度は面積分の一、つまり9分の1になる。

一方で、光の強さはエネルギーの大きさでもあるから、「光の密度」は単位面積辺りの光の「電力」と置き換えることもできる。そうすると、ある面積における受光電力は、距離の2乗に比例して減衰するという言い方ができるわけ。

光は電波の一種なので、光以外の電波においても全く同じ性質を持つ。だから、電波は距離の2乗に比例して減衰すると言える。そして光と同じように、減衰するというのは「その点における電波の受信電力」が低下するという意味になる。

尚、この減衰はどんな周波数であろうとも同じように発生するから、ミリ波の減衰が特別大きいということはない。ミリ波だって、800MHzとかのプラチナバンドだって平等に距離の2乗に比例して減衰する。

A: なるほど。イメージだとミリ波の方が距離での減衰量が大きいような感じがしますけど、周波数には関係無いんですね。なんか、間違って覚えていた気がします。

B: だけど、電波にはもう一つ減衰要因がある。それがみんな問題にしている周波数、波長に大いに関係するんだ。おそらく、みんなこちらを勘違いしている。

A: 波長の短いほど減衰が大きいってやつですね。

B: なんで波長が短いほど減衰が大きいのか、ということを説明するのに、私はよく虫取り網を例に出して説明している。

波長の長さというのは、アンテナが捕まえるべきものの”大きさ”と考えていい。昆虫で例えれば、アンテナが虫取り網であり、長い波長というのは大きな”カブトムシ”や“クワガタ”、短い波長というのは小さな”蚊”や”小バエ”だと思ってくれ。

A: なんだか、強引で、あんまりうれしくない例えが来ましたね。

B: 虫取り網の「網の目の糸の長さが一定」だとする。カブトムシを捕まえるためには網の「開口部」を大きく取る必要がある。しかし、その代わり「網の目」は粗くてよくて、隙間が沢山あっても構わない。一方、蚊を捕まえるためには、「網の目」は細かい必要があり、網の目を細かくすると糸を沢山使ってしまうので、網を小さくする、すなわち「開口部」を小さくせざるを得ない。

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アンテナを虫取り網に例えると・・・

A: 言い換えると、波長が長い、つまり捕まえたい昆虫が大きいときは、網の目を粗くできるので開口部が大きくでき、波長が短い、つまり捕まえたい昆虫が小さいときは、虫取り網の目は細かくする必要があり開口部は小さいせざるを得ない、そういうことですね。

B: 両者はトレードオフであり、結果には違いが無いと聞こえるかもしれない。でも、開口部が大きい網と小さい網、通常どちらが虫を捕まえやすいかと言えば?

A: 当然、開口部が大きい方ですね。

B: そうなんだよ。開口部の大きい方が昆虫が捕まえやすい。基本的に、開口部の面積に比例して昆虫を捕まえやすくなる。

A: そうですよね。

B: そこで、最初の「プロジェクター」の話を思い出してほしい。距離が増えると減衰が大きくなるのは、画面全体の明るさは一緒でも、画面のサイズが大きくなるため、面積辺りの光の密度が小さくなるから、という話をしたよね?

A: 面積が距離の2乗に比例するから、結果的に電波の強さは距離の2乗に反比例するというやつですね。

B: でも、実際に電波を受信する環境においては「受光部のサイズ」も重要になる。というのも、虫取り網の開口部の大きさが受光部のサイズになり、受光部のサイズが光の総量になるから。だから、「波長が長い=受光部が大きい=光の総量が多い」、「波長が短い=受光部が小さい=光の総量が少ない」になる。

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開口部(受光部)が大きい程、光量が多い
すなわち、波長が長いほど受光量が多くなり、波長が短いほど受光量は小さく

これを電波で言い換えれば、波長が長い・周波数が低い電波は、開口部の大きなアンテナになるため、電波を集められる面積が多く、それゆえトータルで強い電波を受信出来る。一方、波長が短い・周波数が高い電波は、開口部の小さなアンテナとなるため、電波を集められる面積が小さく、受信する電力も弱くなるってこと。これこそが、周波数の高い電波が飛ばないと言われる所以の一つだ。

A: なんとなく見えてきました。

B: この開口部の面積ことを無線用語で「アンテナの実効面積」と呼ぶんだけど、この実効面積の半径がアンテナの波長に比例するため、電波の受信電力(面積)も波長の2乗に比例する。逆に電波の「減衰」で考えれば、減衰は波長の2乗に反比例すると言える。波長が長いほど減衰が小さく、波長が短いほど減衰が大きい。

A: なるほど。距離の2乗に比例して減衰するのは周波数に限らず同じとしても、受信するアンテナの大きさが異なるため、受信電力が周波数の2乗で変化するというわけですね。それがミリ波は飛ばないと言われる理由ですね。

B: 意味はそうなんだが、厳密に言うとちょっと違う。ミリ波は距離による減衰のせいで遠くまで飛ばないのではなく、単純にミリ波は受信しにくいだけだ。ミリ波が飛ばないということはない。真空中や障害物が無い場所に限ればね。

A: ミリ波は距離の減衰が多いのではなくて、受信しにくいのだってことは分かったのですがが、なんか最後含みのある言い方しますね。

次回予告

受信しにくいだけじゃない? ミリ波に降りかかる様々な問題。一体ミリ波は何なのか? 次回をお楽しみに。

【社内雑談】盛り上がってる?ミリ波 その1 その2 その3

(担当M)

※1; Mobile World Congressの略称。毎年2~3月にスペイン・バルセロナで開催される、携帯電話業界最大の展示会。日本の4大事業者含め日本企業も多数展示しており、日本からの来場客も多い。

※2; 公益社団法人移動通信基盤整備協会、通常JMCIAのこと。かつて「社団法人道路トンネル情報通信基盤整備協会」という名称だったため、略されて「トンネル協会」と呼ばれていた。2005年に名称変更し、現在の名称となっている。

※3; 携帯電話基地局などを事業者間で共用利用する”インフラシェアリング”を事業とする企業。もともとは、社名の通り建設費が高価になる鉄塔局の事業者間共同利用をメインに行っていたが、現在は屋内基地局の共用も多い。

※4; 中継器は、リピーターと呼ばれることも多い。