1. 主要ページへ移動
  2. メニューへ移動
  3. ページ下へ移動

トピックス

記事公開日

【社内雑談】ドコモがRCSはじめるってよ その1

はじめに

NTTドコモが最新の携帯電話メッセージサービスであるRCS:Rich Communication Serviceを今年の夏から開始するというプレスリリースを発表しました。RCSとはNTTドコモ公式によれば、

「RCS」は、SMSでご利用いただけるテキストメッセージに加えて、写真や動画、スタンプといったコンテンツの送受信が可能なメッセージサービスです。スマートフォンに標準で入っているメッセージアプリで、すぐに使い始められ、グループチャット機能もご利用になれます。 https://www.docomo.ne.jp/service/rcs/?icid=CRP_INFO_news_release_2026_05_13_00_to_CRP_SER_rcs

ということです。おそらく、これを読んでいる人は思ったはずです、「別に今までだって写真や動画は送れたし、スタンプだって使えたよね?今更何のこと?」って。多くの人がLINEを使っていて、動画もなにも何でも送れていたし、単純なメッセージならiPhoneのiMessageもあります。ドコモやKDDI、ソフトバンクならiMessageっぽい「+メッセージ」というメッセージアプリもあります。

確かに、今更感満載ですが、なぜ2026年の今になってドコモはRCSに対応と発表してきたのでしょう?そして、+メッセージを含む既存のメッセージアプリはどうなっていくのでしょうか?いつもながら、社内で雑談しながら考えてみました。

毎度おなじみではありますが、このブログはエンジニア個人が好き勝手に発信するものであり、所属組織(株式会社三技協)の公式の見解ではありませんので、あらかじめご承知置きください。

fig
+メッセージは、株式会社 NTTドコモ、KDDI 株式会社、ソフトバンク株式会社の登録商標です。

メッセージの歴史

社員A(以下A): NTTドコモが「新たなメッセージサービスRCSの提供を、2026年夏から開始します」という発表をしました。しかし、私の中ではRCSは既に始まっているし、別に今も使っているという印象なのですが?

社員B(以下B): そうだよね。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの三社で始めた「+メッセージ」はまさにRCSそのものだし。というか、今回の話題の裏テーマは+メッセージとなると思うけど。その前に、おそらく携帯電話に詳しくない人のほとんどは「RCS」という名前もなにも全く知らないと思うので、そこから説明していこうと思う。

A: 確かに、普通にスマホを使っていてRCSなんて名前聞いたことないですね。今も使っているSMSや、それの後継と言われたMMSまでは、何となく聞いたことがありますが。

B: そりゃそうだよね。RCSは、SMSやMMSが進化したものなんだけど、まずSMSから説明しようかな。以前もSMSについては、詐欺に使われているというネタを記事にしたことがあったので詳しくはそちらを見てほしいけど、SMSを一言で言えば「回線交換で送る電話番号を宛先とした文章メッセージ」の事だ。

A: 回線交換、というところがポイントなんですよね。

B: そう。携帯電話とインターネットが直接繋がっていなかった時代の仕組みなので、音声の電話をかけるのと同じ要領でメッセージを送っていた。言わば、メッセージを1通送るたびに、裏で一瞬だけ電話をかけにいっていたようなものだね。だから、メッセージ1通の料金も当初は電話1回分の料金だったりした。で、SMSのサイズは1回の送信で送れる量に制限されるから、文字数も固定されていて、NTTドコモだと全角70文字以下だった(2019年に670文字に緩和)。

A: Twitter(現X)より少ない!

B: だけど、上の記事でも話したとおり日本でSMSは、あまり流行らなかったんだよね。というのも、SMSが流行る前にi-modeによるキャリアメールが流行ってしまったから。キャリアメールはインターネットメールベースだったので、最初から色々と多機能だった。当然、写真などの添付ファイルも扱えたし、ハイパーリンクもお手の物だった。ちなみに、ここで「絵文字」というものが登場する。絵文字の発祥については諸説あるけど、携帯電話における絵文字を規格化し広めたのはi-modeであることは間違いない。そのため、絵文字は英語でも「emoji」と呼ばれるね。

A: なるほど。そう言えばキャリアメールは絵文字対応でしたね。絵文字使いまくりのメールが流行っていました。

B: そのキャリアメールが画期的だったのは、それが「パケット通信」によって送られるということと、インターネット基準だったこと。

前者は文字数が少なければ少ないほど使用するパケットが減るし、逆に長文でもパケット数が増えるだけだから長文が書けるというメリットがあった。最初期のi-modeメールこそ250文字の制限があったけどすぐに2000文字とかになって、当時の画面サイズを考えれば事実上ほとんど制限がないレベルだった。これはパケット通信のおかげだ。

そして、後者のインターネット基準だったことの最大のメリットは、事業者や国、システムの敷居を超えられること。実は、先ほどのSMSは携帯電話会社が違うとメッセージが送れない、という時代が長く続いた。この壁がなくなったのは、日本だと2011年。なんと初代iPhoneが日本に来てから3年も後のことなんだ。すでにスマホの時代だよ。キャリアメールは、システムとしてただのインターネットメールだから、最初から携帯会社や国の違いなんて関係無いし、なんなら携帯電話ですらないPCとやり取りだって出来た。

A: 今考えても、とっても先進的ですね。

B: で、日本だけi-modeや、それに対抗した現KDDIやソフトバンクのシステムでメッセージがやり取りされていたから関係無かったんだけど、世界ではSMSでは不十分という声が大きくなってきて、結果MMS、Multimedia Messaging Serviceというものが開発された。さすがに回線交換ベースは止めて、パケットベースになった。また、写真や動画なんかも添付できるようになった。まあ、どれもキャリアメールがとっくに対応していたものだけど。

それで、MMSのスタートが2002年ということなんで、日本ではその頃はとっくにキャリアメールが普及していたから、MMSなんて気にもしなかった。実際、ほとんどのガラケーはMMSに対応していなかったはず。対応する必要も無いしね。唯一、現ソフトバンクが、ボーダフォン時代にMMSに対応してちょっとだけ話題になった記憶がある。

A: ボーダフォン時代は一時期「国際標準」にこだわって、厳しい言い方をすると「時代遅れのサービス」を輸入するってことをやっていて、ユーザーからひんしゅくを買っていた時代がありましたよね。みんな、写メールをはじめとするJ-Phone時代の先進性を知っていたからこそがっくりしていました。MMSもその一環ですかね?

B: ははは、あったね。Vodafone Global Standard※1。すっかり忘れてたよ。

で、その時代遅れのMMSを日本に再登場させたのは、後に時代を作るiPhoneであった、というのは皮肉だね。iPhone登場時はボーダフォンからソフトバンクへ変わっていたけど、その時ソフトバンクのキャリアメール"@softbank.ne.jp"にiPhoneを対応させるためMMSを使ったようだ。

ちなみに、iPhoneには、"@i.softbank.jp"というキャリアメールではない「普通のインターネットメール」もあって両方使えるってことになってた。でも、iPhone 3GがMMSとキャリアメールに対応したのって発売から1年後ぐらいだからね。自分のように、他所からMNPしてiPhone 3Gへ機種変した人達は、結局"@i.softbank.jp"しか使っていなかったと思う。今更キャリアメール割り当てられても・・・ってね。

A: そんなことがあったんですね。

B: とりあえず、ここまでをまとめてみよう。SMS、キャリアメール、MMSの比較表はこんな感じ。

比較項目 SMS
(ショートメッセージ)
iモードメール
(キャリアメール)
MMS
(マルチメディアメッセージ)
送受信の宛先 電話番号のみ メールアドレス
@docomo.ne.jpなど)
メールアドレス または 電話番号
初期の文字数制限
(全角換算)
約70文字
(※2019年に最大670文字へ拡張)
250文字(開始初期)
(※後に最大10,000文字へ拡張)
約15,000文字〜
(キャリアの容量制限に依存)
表現力・添付ファイル テキストのみ
(画像や動画は送れない)
絵文字、写真・着メロ添付、
デコメ(HTML装飾)など
写真・動画・音声などの
マルチメディアファイルを標準サポート
通信の仕組み
(インフラの裏側)
回線交換(SS7網)
通話電波の「隙間」を使って送る
パケット交換(IP網)
インターネットメールをモバイル最適化
パケット交換(3GPP標準)
世界共通の3G標準メッセージ規格
料金体系 1通あたり数十円の従量課金
(パケット定額の対象外)
パケット通信料による課金
(文字数や添付サイズで変動)
パケット通信料による課金
(ソフトバンク等では定額対象)

A: キャリアメールとMMSは、思ったより近いですね。

B: MMSとキャリアメールの最大の違いは「電話番号」だけで送れるかどうかという点※2。が、MMSのメリットってそれぐらいしかない。当時は、電話番号は重要な情報というか”ID”だったため、電話番号だけで送れるというのは貴重だった、当時はね。

A: やたら、”当時”を強調しますね。

B: そう、”当時は”だから。今は、電話番号なんてどうでも良い情報だからね。その状況を作ったのは、まずAppleのiMessageだ。先ほど、ソフトバンクのiPhoneは"@i.softbank.jp"というメールを使っていた人が多いと言ったけど、それすらもiMessage登場までだ。iMessage登場後は、かなりソフトバンクのメールの重要性は下がった。

A: iMessageですね。私も使ってます。

B: iMessageは巧妙に作られている。iPhoneの情報、具体的にはApple IDと電話番号がアップルのサーバーに勝手に保存される。で、iPhoneがメッセージを送ろうとするとき、まず裏で相手の電話番号をサーバーに送り、相手がiPhone(iOS製品)かどうかを判別する。相手がiPhoneならiMessageというApple独自のメッセージ方式で送る。相手がiPhoneではない、恐らくその場合のほとんどがAndroidだと思うけど、その場合は普通の携帯電話としてのSMSやMMSで送る。それを、なるべくユーザーに見えないようにやる。

fig
iMessageの基本的仕組み

だから、相手が何であろうとiPhoneの「メッセージアプリ」で全て完結する。SMSとかMMSとか何のメッセージを送っているのかは一応料金の問題もあるから確認が入ったりはするけど、ユーザーはあまり意識する必要は無い。なんで送ろうとも見た目は同じだからね。ただ、メッセージが青くなるか緑になるかの差はあるけど。

A: 青がiMessageで、緑がSMS、MMSですよね。相手がiPhoneとわかっているのに緑になるとイラッとします。

B: iMessageの登場前は、電話をかけるのと同じように相手の電話番号に対してSMSを送るというインターフェースだったけど、iMessageではアドレス帳(連絡先)から相手を選ぶだけだから、何を使っているとか、そんな事を意識させなかった。また、メッセージなのにチャットのように表示されるUIも相まって、キャリアメールが担っていた役割は、ほとんどiMessageが担うようになった。

A: 確かに、それはありますね。私もiPhoneに変えて、キャリアメールを使わなくなりました。

B: そして、電話番号を消し去ったもう一つの要因がLINEだ。これは、日本においてはLINEということであって、例えば中国ではWeChat(微信)であったり、ヨーロッパのWhatsAppであったり、主要なアプリは各国で異なるので、置き換えて読んでほしい。

A: はいはい、理解しています。他にもTelegramとかKakao Talkとかですね。

fig

言わずと知れた日本のメッセージングサービス王者

B: LINEのようなメッセージアプリによるサービスはOTT(Over-The-Top)メッセージングと呼ばれる。Wikipediaによると「モバイルネットワーク事業者が提供するテキストメッセージングサービスの代わりに、第三者が提供するインスタントメッセージングサービスやオンラインチャットを指す」とのことだ。

LINEの機能その他については皆様の方がよく知っていると思う。携帯電話技術的に言えば、LINEは完全にインターネット上で展開されているサービスであり、通信すること以外の携帯電話ネットワークのシステムを全く使っていない。つまり、OSの機能は使っていても、3GPPなどの標準規格による仕様、携帯電話事業者の技術的サービス、基地局メーカーの機能、そういったものを一切使っていないというところが今回の話のポイントである。

A: なるほど。iMessageは、まだ携帯電話のサービスであるSMSやMMSを使っているけど、LINEはそういったものすら使っていないということですね。

B: そういうことだ。現在の状況だと、メッセージの多くがLINEに流れていて、SMSやMMS、iMessageよりもLINEのメッセージ数の方が圧倒的に多い状況だ。これは、日本だけではない。電話番号だけで送ることができるSMSは生き残っているが、メアドも必要で完全にOTTメッセージングと被っているMMSに至っては、あまりに誰も使わないから廃止してしまった事業者もある※3ぐらいだ。

A: MMSって携帯電話の標準機能ですよね。それを、いくら何でも廃止とは・・・

B: そこで、失敗したMMSに変わって登場するのがRCSというわけだ。

A: 話が長かったですが、やっとRCSが登場するわけですね。

次回予告

なぜRCSはSMSと同じ失敗を繰り返したのか? そして、そのRCSを立て直したのは誰なのか? RCSの成り立ちから現在のRCSに繋がるまでをふり返ります。次回をお楽しみに。

(担当M)

※1; VGSと略されるボーダフォンの戦略の一つ。国際的な事業者であるボーダフォンが、日本において世界標準の機器や端末を使うことで、全体的なコストダウンを図る目的があった。しかし、当時日本の携帯端末及びサービスは世界の最先端を行っており(それ故、後にガラパゴスと呼ばれるようになった)、世界的な標準機種だったNokia、サムスン等の端末を輸入すると、日本ではかなり時代遅れな機種に見えてしまった。このことがユーザー離れを招き、結果的にボーダフォンの日本撤退(ソフトバンクへの売却)へ繋がる一因となったといわれている。

※2; 電話番号だけの場合、通常はSMS形式で送られているが、ユーザーには見えない場合が多い。(SMS/MMSのどちらで送るかは携帯電話事業者のシステムによって異なる)

※3; インド、フィリピン、スイス、ドイツなどでMMSを廃止した事業者が出てきている。