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【続報】AMラジオをやめるってなに?
高校生でも分かる通信用語#27

 

はじめに

丁度2年前の2024年2月に、AMラジオをやめるってなに?高校生でもわかる通信用語 #4という記事を上げて、結構アクセス数が多い記事になっておりました。詳しい内容は、中身を読んでいただきたいのですが、ざっと要点だけ説明すると

  • AMの設備維持は高コスト
  • radikoも登場したし、AMラジオしか聴けない人は少ないのではないか?
  • だから、民放AMラジオ局はAMラジオをワイドFM化※1したいと考えている

ということでした。前述の前回の記事では、特になぜAMの設備維持が高コストなのかを説明しました。AMの送信設備は、周波数の関係から、FMラジオやテレビとは比較にならないほど巨大であり、必要な敷地面積もかなり必要です。そして、出力が非常に強いため非常電源設備も巨大なものが必要となります。 例えば、TBSラジオを例にとると、AM送信所(送信局)は高さ約150m、で戸田ボートのそばの現在はマンションが乱立し始めている地域に、マンションの一棟や二棟建てられそうな広い敷地を使って建っているのに対し、ワイドFMは他のAM2局(文化放送、ニッポン放送)と一緒に東京スカイツリーの共用アンテナから送信できています。これだけでも、なんとなくAMとFMのコストの違いを感じていただけるかと思います。

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TBSラジオ戸田放送局
さて、今回記事は、AMラジオをワイドFM化したがっている民放AMラジオ局が、その後どうなっているかを紹介する記事です。AMラジオ局は、AMでの放送をやめられたのか?現在どうなっているのか?ということを紹介していきます。

停波実験の結果

前回の記事は、2024年の2月に開始された「AM局の運用休止に係る特例措置」に合わせて書いたものです。この「AM局の運用休止に係る特例措置」というのは、AM送信所廃局(FM化)にむけて実験的に1年間AMを停波してみるという措置のことです。いや、実験的にでも何でも停波しちゃったら、それはなし崩し的にそのままAMやめちゃうんだろう?と思う人も少なくないでしょうが、一応建前上は「実験的な措置」です。そして、その実験的な措置は、全国14社が参加して行われました。

参加したAM局は県単位の放送局が多いのですが、東海ラジオのような複数県をカバーする広域放送局も参加していました。また、上記の停波実験については、各ラジオ局の本社があるような大都市(多くは県庁所在地)をカバーする送信所は停波せず、聴取人口のすくないであろう地域の送信所(中継局)だけ止めているケースが多いようでした。(ちなみに、関東のAMラジオ局は広い平野がエリアのため1送信所でほぼ全てのエリアをカバーしているのに対し、地方のAM局は1都道府県で何局も送信所があるケースがほとんどです。)

この14ラジオ局が1年間停波した結果は、住民へのアンケート結果をまとめた形の報告書となっています。その調査結果の中で「AMを停波して支障があったかなかったか?」という項目があります。おそらく、これが一番大事になる調査結果だと思います。そして、この結果をまとめたのが、下の表になります(Notebook LMを使用しています)。

AMラジオ停波により支障(不便)がありましたか?

放送局 はい いいえ
南日本放送 31.3% 68.7%
福井放送 33% 67%
長崎放送 33% 60%
熊本放送 35% 65%
東海ラジオ 36.8% 63.2%
RKB・KBC 37% 63%
北陸放送 41.2% 58.8%
新潟放送 43% 57%
山口放送 44% 56%
南海放送 49.8% 50.2%
LuckyFM茨城放送 51.2% 48.8%
IBC岩手放送 55.6% 44.4%

RKB毎日放送と、九州朝日放送(KBC)は共同でAM送信所を運用しており、停波実験も共同で行った

この結果の基となるアンケートですが、実はサンプルの取り方が各社バラバラで、統一がされていません。例えば、熊本放送は完全にランダムで対面調査をした結果から、「AM停波を知っている」と答えた人の中で「支障がある」と答えた人の割合です。一方で、北陸放送ではAMラジオのホームページ上でアンケートを実施し解答した人の内、支障があると答えた人の割合です。というわけで、いろいろとアンケート方法は異なるのですが、共通しているのはアンケートの母数は「普段からラジオを聞いている人」となります。そして面白いのは、どの結果をとっても、「はい」の割合は30から50%程度と、それなりの数字に収まったことです。

さて、皆様はこの結果をどう思いましたか?個人的には、意外と高いと思いました。というのも、ラジオの聴取率というのは「ずっと右肩下がりだったところを2010年に始まったradikoによってなんとか低下を阻止している構図」と理解していたからです。つまり、真剣に聞きたいリスナーはかなりの数がradikoに移行してきており、一方で車で何となく聞いているという人は車の移り変わりでワイドFMに対応してきているのではないかと推測していました。そして、それであれば、もはや純粋なAM受信機で聞いている人は少ないように思っていました。しかし、実際はそうではなかったようです。

下の画像は、総務省地上放送課が2025年3月出した、つまり前述の各ラジオ局の報告書と合わせて出された報告書からのデータです。インターネットラジオ、すなわちradikoの認知度を調べたものです。(調査結果にはポッドキャストも含んでいるのですが、ポッドキャストを知っていてradikoを知らないとは考えにくいので。)

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radikoの認知度
出典:令和7年3月総務省 ラジオ放送聴取等の実態に関する調査報告書

母数はラジオリスナーに限らない全回答者で、結果はご覧の通り、おおよそ50%の認知度。停波実験のエリアかどうかに関わらず50%です。おそらく、これに回答した人の95%以上はスマートフォンを持っていて、そのほぼ全ての機種がradikoアプリに対応しているはずですが、二人に一人は知らないという状態なのですね。いや、予想より知られていない。おそらく、スマホを持っていない、使いこなせていない高齢者層が多くを占めるのでしょうけど、若くてもラジオに全く興味ない人が知らないと答えても不思議ではありません。それでは、もう一方のワイドFMの知名度はと言うと、同じ報告書のデータはこうなっています。

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ワイドFMの認知度
出典:令和7年3月総務省 ラジオ放送聴取等の実態に関する調査報告書

むむむ!全回答者のうち、月1回以上AMラジオを聞くのが「AMラジオリスナー」と定義されていて、それは全体の26.8%となっている。それは、自分の体感より若干多い気がするけど、理解します。

しかし!!その「AMラジオリスナー」のうち、ワイドFMを知っているのが61.1%ですと?この母数になっているAMラジオリスナーの26.8%の人達って、本当にAMラジオ聞いているのか?もしやNHKラジオ第一※2のみ聞いているとか? 偉そうに書いているこの私も、正直AMはプロ野球シーズンの文化放送ライオンズナイターしか聞いておりませんが、その少ない聴取時間の中でも「FM91.6、AM1134」のジングルは何度もかかります。それも何年も前からずっとやってます。いや、AMを聞いていてワイドFMを知らないなんてあり得るんですかね?。放送を聞いていれば、あらゆるシーンで何度も告知していますから、AMリスナーなら99%以上の人がワイドFMを知っていると思ってました。もしかして、関東以外の局だとワイドFM周波数のジングルって流していないんですかね・・・ ちなみに、radikoと同じように母数を全回答者に直すと、ワイドFMの知名度は16.4%となります。radikoのほぼ三分の一です。

というわけで、AMリスナーですら約4割の人がワイドFMの存在すら知らないのですから、radikoやワイドFMへの移行が進むわけないってことです。ですから、AMが停波して困る人が30~50%いたとしても何ら不思議はありません。

ちなみに、各ラジオ局の報告書には自動車のワイドFM対応状況なんかも載っておりまして、山口だと80%の人がワイドFMに対応していると答えているなど、ほとんどの局のアンケートで50%以上の割合でワイドFMに対応していると答えています。しかし、ただ一つ東海ラジオだけ対応率30%となっており、この辺の理由はよく分かりません。もしかして、東海地方の人は、ラジオも付いていない”漢仕様のプロボックス”乗りが多いからか?と言いたいところですが、東海地方のワイドFMのエリアが(元々のAMエリアと比較して)狭いというのも背景にありそうです。一応、2018年以降製造の新車はほぼ全てワイドFMに対応しているようなので、こちらは放っておいても普及していくでしょう。

停波実験の現状

さて、ここからは停波実験がどうなっているのかを見ていきます。先に停波実験をスタートし、報告書を上げていた14のラジオ局はすべて、この停波実験を2026年9月30日まで延長しています。停波する送信所を増やしているラジオ局もあります。そして、いくつかのラジオ局では、ホームページ上で明確に「2028年(秋)までにFM局になることを目指します」と宣言しています。また、2025年12月からは、追加で新たに14ラジオ局がこの停波実験に参加しています。影響が大きそうな、関東(TBS、QR、LF)や関西(MBS、ABC、OBC)の広域ラジオ局は、まだ停波実験に参加しておりませんが、これで民放ラジオ局全47局の内の半分以上が停波実験に参加していることになります。したがって、民放ラジオ業界全体がAM停波しワイドFM化する方向で進んでいる、というのは間違いないと思います。

ただし、民放AMラジオ全47局のうち実は3局だけワイドFM化を計画していません。その3局の内2局は北海道のAM局ですが、これはとても理解できます。北海道は巨大で、かつ札幌圏以外の各都市は距離的に分散していこともあり、誰が見てもFMには向いていません。一応、北海道の両AM局もワイドFMでの補完放送はしていますが、カバー範囲はおそらく札幌周辺都市だけで、AMを置き換えるレベルにはありません。ちなみに、北海道のNHK FMは道内で39もの送信所をつかって放送をしていますが、それでも全てのエリアをカバーしているかどうかは微妙なところです。そう考えると、北海道AM局のワイドFM化は現実的ではない、ということに誰も異論はないでしょう。

さて、残るFM化不参加の1局はどこでしょうか?それは、ABS秋田放送です。秋田放送は、FM化不参加の理由を明確に宣言しているわけではありませんが、いくつかの報道をまとめると以下の様な理由のようです。

  • 秋田はエリアが広く、山がちなのでFM送信所を数多く建てる必要があり、コストがかさむ
  • AM維持費とFM送信所設置+維持費を考えると、AM維持費の方が安くなる

なるほど、理由だけ聞けば理解できなくはないです。特に、現状のAM茨島送信所はエリアが広く効率的だから、FM化しなくても良いという判断になりやすいのも分かります。しかし、秋田県だけが特別FM化しにくいのかと言えば、恐らくそうではないでしょう。例えばお隣岩手県。岩手は北海道に次ぐ面積なのに加えて、リアス海岸というFM放送との相性がもの凄く悪い地形を持っています。事実、NHK FMで比べると、NHK秋田のFM送信所が5局なのに対し、NHK岩手は8局使っています。つまり、秋田より岩手の方が、FMにとっては厳しい広さと地形のはずです。

しかし、一期の停波実験から参加している民放AM局のIBC岩手放送は、すでにワイドFMの送信所を7局も持っていて、むしろFM化の先頭を走っています。これはNHK FM秋田よりも多い数です。尚、岩手放送も、秋田放送もテレビ放送が本業の”ラテ兼営”と呼ばれる放送局です。この両社は、売上も社員数もほぼ同程度。秋田放送のほうが(視聴率の高い日テレ系列のため)利益率が高いと言われています。つまり、ワイドFMをやるなら、むしろ秋田放送の方がやりやすいはずなのです。

AM送信局の意外なデメリット

さて、最初の方に出てきた「AMラジオ停波により支障(不便)がありましたか?」という質問について見ていきます。IBC岩手放送で、支障があるにYESと答えた人の内、その理由として最も多かったのが「災害時やネット回線障害時にも聞くことができるAMラジオが必要だから」と答えた人でした。なんと、約半数の46.7%の人がそう答えています。確かに、災害時にはAMというイメージの人が多いと思います。実際、電波が届く範囲はAMの方が広いのは間違いありません。また、受信機の方はAMの電池の消費はFMよりも2割ほど少ないとも言われています。最悪、鉱石ラジオで電池無しで聞く、なんてことも可能です。どこでも長時間となるとAMが強いのは間違いありません。でも、常にAMの方が災害に強いか?と言われれば、そうでもないのです。

AMは、100m以上ある巨大アンテナで広い土地が必要なため、多くの送信所が「広く平らな土地」に建てています。例えば、前述のTBSの戸田放送局は、戸田ボート(戸田公園)のすぐ隣に建っています。ボート場があるということは川のそばってことです。しかも、そういった川のそばのような土地の方がAMの電波が飛ぶという技術的側面もある。だから、多くのAM送信所が低地に建っているわけで、それは同時に洪水にとても弱いことを意味します。そして、そういった土地は得てして液状化にも弱い。つまり、地震にも弱い。さらに、海沿いなら津波にも弱い。東日本大震災では、津波による直接的な被害はなかったものの敷地自体は水没してしまった送信所もあり、今後起こりうる震災に向けて対策が必要とされています。しかし、何度も書いているとおり、AMアンテナは敷地は莫大で、出力が大きいために設備も大きい。それに水没対策するとなるとかなりコストがかかる・・・

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AM送信所の状況
出典:平成23年総務省 放送ネットワークの強靱化に関する検討会 資料より

岩手放送は、津波の被害が最も大きかったエリアをカバーする放送局です。岩手放送自身も、先の大震災で大きな被害を被りました。こういった甚大な災害が発生した状況においても放送を維持するためには、老朽化した既存AM送信所に対策にコストを掛けるよりも、高台の新しいFM局を増やした方がよい。エリアの穴は局数を増やせば良い、岩手放送はそのような判断をしたと言われています。

一方で、秋田放送は津波の被害はなかったこともあり、AMを使い続けた方が良いという判断だったのでしょう。(ちなみに、秋田放送の親局である茨島送信所は、洪水にも津波にも弱そうな場所に存在していますが・・・)これは、どちらが正しいと言うことではありません。

放送局は言いにくいでしょうが・・・

最後に、(当面は)AM化のままと言っているラジオ局もありますが、私が思っている、どんな理由を付けようとも、最終的には必ずFM化するであろう理由を、ここに書いておきます。

ラジオの主な聴取層というのは、総務省の調査でも高齢者、ドライバー、若者の3つとされています。スマホ時代の若者がラジオを聞いているというのは意外かもしれませんが、私も若かれし頃はオールナイトニッポンを聞いていましたし、今の若い子だって、そういった人気の芸人、タレントが出ているラジオ番組を聴いている人もいるでしょう。しかし、今の若者が「ラジオの受信機」を持っている可能性は低いですよね。そうなると多くがradikoで聞いていると考えられます。

皆さんは、今AMラジオをradikoで聞いている若い子達が、今後AMの電波でラジオを聞くようになると思いますか?私の時代はどこの国の放送か分からないノイズと闘いながら※3オールナイトニッポンを我慢して聞いていました。だって、それしか方法が無いから。でも、今の子達は、誰もが持っている目の前の機器を使えばノイズのないクリアなステレオ音声でオールナイトニッポンが聞けます。それなのに、わざわざAMのこもったモノラル音で番組や音楽を聞く必要ありますか?

高齢者はいいんですよ。昔からあの音に慣れているし、失礼ながら高音も聞こえなくなっているでしょうから。そして、重ね重ね失礼で申し訳ないですが、正直先も長くない。でも、将来のリスナーでもある若い子は違う。radikoもテレビもYoutubeもTikTokも、そして今や電話すらクリアな音で聴ける時代になっています。そんな子達が、今更AMの音を選ぶことはあり得ない。だが、FMの音質ならradikoと遜色ない。

radikoを始めてしまった時点で、クリアな音声でサービスしてしまった時点で、遠からずAMラジオはFM化する運命だったんです。

まとめ

と言うわけで、AMラジオ局のワイドFM化の現状について書いてみました。

多くの民放AM局は財政状況が良くないため、AM送信所の維持費用が大きな負担になっており、それを理由としてFM化を目指しています。特に、影響力の大きい関東や関西の広域局は、地価の高い場所にAM送信所を抱えており、コスト削減の効果も高いです。そして、各AMラジオ局が2028年のFMへの移行を謳っているのは、その年が5年に1度のラジオ放送局としての免許更新の時期に当たるからです。もはや、AM局のFM化は目標の2028年に間に合うかどうかの問題であり、FM化の是非が問われる時期はとっくに過ぎています。ですから、今回紹介した停波実験は、単に困っている人がいるかどうかを調べるというよりは、実態としてはFM放送やradikoへの移行を促すための『周知・猶予期間』として捉えるのが現実的でしょう。

まだ、2028年にはすこし時間がありますので、このブログでは引き続きAMラジオの現状をチェックしていきたいと思っていますので、もう暫くお付き合いください。

(担当M)

※1; ワイドFMとは、従来のFM放送より高い90.1から98.9MHzまでの周波数を使って、AMラジオと全く同じ内容の放送を行っているFM局の事を指す。正式にはFM保管中継局と呼ぶ。例えば、AM954kHzのTBSは、FMでは90.5MHzで東京スカイツリーから送信している。

※2; NHKラジオの再編により、2026年3月29日をもって、AMのNHKラジオ第二は廃止となり、従来のNHKラジオ第一は、3月30日から周波数はそのままでNHK AMと名前を変えることになっている。

※3; AMラジオで使っている周波数は、夜になると空(E層)で電波が反射するようになり、遠くの放送の音が聞こえるようになる。場合によっては、近隣の海外の電波も拾うことがある。そのことは、岩手放送がFM化を進めている理由の一つにも挙げられている。