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【社内雑談】iPhone18 ProもDuoもミリ波非対応
(本当は18無印の話) 後編

はじめに

先日9/9(現地時間)に、iPhone18シリーズが発表されました。そこで、噂されていたとは言え、衝撃な事実が発表されました。それは、なんと「無印は一緒には出ない」ということです。iPhone18 Pro/Pro Maxに加えて、Apple初の折りたたみ式iPhone Duoが発表されましたが、iPhone18無印の話題には触れられませんでした。

今回のテーマは、いつものように「ミリ波非対応」となっておりますが、実際は「メインストリームであり、おそらく一番台数が売れる”無印”をなぜ販売しないのか?」というテーマで話し合いをしていきます。携帯電話の話ではあるものの、ほとんど電話の話ではなくAIの話になっていますが、なぜ”無印”が販売されないかに興味がある方は、是非ご一読を。

後半の今回は、Appleシリコンの話からです。

毎度おなじみではありますが、このブログはエンジニア個人が好き勝手に発信するものであり、所属組織(株式会社三技協)の公式の見解ではありませんので、あらかじめご承知置きください。

【社内雑談】iPhone18 ProもDuoもミリ波非対応 前編 後編

Appleとユニファイドメモリ

B: さてさて、こんなサーバーのメモリの話までしたかというと、実はMac StudioとAppleシリコンの話をしたいからだ。

A: お、いきなりAppleに戻るのですね。

B: Mac Studioは最大512GBのメモリが搭載できる。が、これまで説明したとおり、AI用途でメインメモリを増やしても仕方ないし、一方でVRAM用のGDDRやHBMで512GBのメモリを搭載したら1千万円を超えるMacが誕生するだけだ。

A: 確かに。じゃあ、その512GBはAI向けではないってことですか?

B: いや、間違いなくAI向けだ。というか512GBを使う用途なんてAIしかない。そして、512GBというメモリ量を一般ユーザーでも使えるようにした技術が「ユニファイドメモリ」だ。

A: あ、そういえば以前Siriの話でも出てきましたよね。

B: ユニファイドメモリは、RAMとVRAMの区別を無くして、CPUからもGPUからも共通のメモリにアクセスできるようにする技術だ。先のブログでも出てきたけど、ユニファイドメモリの考え方自体はかなり前からあったのだけど、ユニファイドメモリの存在自体を有名にしたのはXBOX360とPlaystation3(PS3)の話になるよね。

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A: あれは、XBOX360はユニファイドメモリ、PS3はRAMとVRAMが別々に存在していて、合計のメモリ量は両者とも同じだった。でも、ゲームって基本RAMよりVRAMの方が多く必要になる特殊な用途なので、ユニファイドメモリの方が柔軟にVRAMへメモリを割り当てられる分、XBOXの方がゲームの仕上がりが良かった、という話でしたよね。RAMとVRAMが同量だったPS3は、PS3、XBOX360同時発売みたいなゲームにおいてグラフィックの面でXBOX360に劣るゲームが多かったと。

B: そうそう。RAM、VRAM別々の方がピーク性能は上だから、PS3専用に作られ、PS3に最適化されたゲームであれば、XBOX360を上回るゲームが作れたんだけど、そんなゲームはソニーグループ製作のゲームしか無かったからね。これに懲りて、PS4以降はユニファイドメモリが標準になったという歴史がある。

A: けど、確かゲーム機のユニファイドメモリって、VRAM、つまりGDDRをメインメモリとして使うって話でしたよね。

B: そう。だからMac StudioというかAppleシリコンのユニファイドメモリは、ゲーム機のそれとはちょっと違うんだ。Appleシリコン、Mac StudioならM5 Ultraチップだけど、そのユニファイドメモリはメインメモリをVRAMとしても使う形なんだよ。実際、Appleシリコンのユニファイドメモリに使われているのは、LPDDR5Xのメモリだ。

A: LPDDR5Xは、確かにDDR5並みに高速ですけど、AIに使うには非力だと思うのですが。

B: そこでLPDDRの特長が効いてくるんだよ。

A: どういうことですか?

B: メモリの速度というのは、メモリそのものの速度も重要なんだけど、メモリのチップ数というのも同じように重要になる。

A: そうなんですか?

B: 例えば、イメージしやすいように普通のRAM用のメモリを例にするよ。メモリスロットが2つあった場合、16GBのDDR4を一枚挿すのと、同じ速度の8GBのDDR4を二枚挿すのとどちらが速いかというと、後者だ。例えばDDR4の速度が20GB/秒だとすれば、メモリ一枚なら20GB/秒のままだが、メモリ二枚なら最大40GB/秒になる。もちろん、色々な条件があって完全に40GB/秒までにはならないらしいが、少なくとも「二枚の方が圧倒的に高速」であることは間違いない。

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メモリチップ数の違い
メモリは複数チップあった方が、帯域は広くなる

A: メモリの速度は、メモリの枚数×帯域幅になるということですか?

B: そうなるね。そこで際立ってくるのがLPDDRの特性「小さくて省電力」だ。DDRはPCで使うメモリモジュールに載せるために作られているので、そこまで小型化が重要視されているわけではない。しかし、LPDDRはスマホがメインターゲットなので、できる限り小型化されており、かつ他のメモリより省電力に作られている。

A: それとメモリの速度にどのような関係があるのですか?

B: メモリはできる限りCPUとGPU、つまりプロセッサーのそばに置きたい。プロセッサーとメモリの間はバス(接続回路)で繋がれるんだけど、その距離が短いほど高速に通信できるし、エラーも少ない。そもそも、LPDDR自体がプロセッサのそばに置くことを前提で作られている。

A: なんとなく、言いたいことが分かってきましたよ。

B: LPDDRは小さい。小さいからプロセッサーのそばに集積して置ける。そして、省電力だから集積させても発熱が少ない。発熱が大きい部品は集積できない。

A: つまり、LPDDRは小さくて省電力なので、CPUやGPUの周りにメモリを沢山おくことができる、そして、メモリの枚数を稼ぐことによって、メモリの帯域幅も稼げる、そういうことですね。

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LPDDRのメリット
プロセッサーのそばに多くのメモリを集めることが、メモリ高速化の鍵

B: ユニファイドメモリというのは、CPUとGPUでメモリを共有するという意味なんだけど、それと同時に、GPU、GPU、メモリが一体化されるという意味でもあるんだ。それぞれを近い位置に配置すれば、バスを太く短くして高速に通信ができるようになる、それがユニファイドメモリのメリットなんだよね。

A: なるほど。ユニファイドメモリってそんなメリットもあるんですね。ゲーム機のようにRAMとVRAMの割合が可変にできることだけがメリットだと思っていましたよ。

B: もちろん、そのメリットがなくなったわけではないけど、それよりもAppleはCPU、GPU、メモリを密接させることで高速に通信できるというメリットを重視して、MacのCPUをユニファイドメモリへ変更したんだよ。もちろんそれだけじゃなくて、そもそもiPhone含むスマホのSoCでは、むしろユニファイドメモリであることが当たり前だから、Appleとしてはただ単にiPhoneとMacを共通化しただけ、と意地悪な言い方もできるんだけどね。

A: いずれにせよ、MacはWindows PCに先駆けてユニファイドメモリを採用できたわけですから、さすがAppleですよ。

B: おそらくなんだけど、AppleがCPUをARMへ変更し、ユニファイドメモリ構成にするって決めたときはオンデバイスAIなんて考えていなかったと思うよ。むしろ、初代M1 Macbook Airなんてメモリ少なめで8GBなんてモデルもあったぐらいだから。あ、8GBは今でもあるか。

A: Macbook Neo※6ですね。8GBは、さすがにAIも動かないと思いますが。

B: いや、一応Apple Intelligence対応なんだけどね。ただ、フルスペックのApple Intelligenceは動かないし、正直8GBだとLM Studioで動かせるオンデバイスAIもかなり少ないね。

A: そうなっちゃいますね。

B: 話を元に戻すと、ユニファイドメモリになって、LPDDRを大量にプロセッサー付近に配置することによって、GDDRを使わずともメモリ帯域を稼ぐことができることがわかった。そして、ユニファイドメモリがオンデバイスAIに最適な構成であることも間違いないだろう。

ちなみに、Mac Studio M5 Ultraのメモリ帯域は、なんと最大1.2TB/秒にまでなっているからね。

A: なんと、テラですか! HBMでもないのにテラを越せるなんて、ユニファイドメモリというかLPDDRは凄いですね。

B: ただね、当然ユニファイドメモリはAppleの専売特許ではない。実は、最近になってライバルメーカー達もユニファイドメモリの機器を出してきている。その一つが、NVIDIA。NVIDIAは今年5月にWindows用ユニファイドメモリSoCであるRTX Sparkを発表した。NVDIAは10年以上前にTegraという主にゲーム用のSoCをWindows向けに出していたんだけど、それ以来のWindows向けSoCだ。革ジャン※7に言わせると「Windows PCの使い方を再定義する新チップ」だそうだ。

A: NVIDIAのユニファイドメモリですか。

B: RTX Spark最初のSoCであるN1Xは128GBのユニファイドメモリ、CPUはARM、GPUはBlackwellと最新。メモリ帯域は発表されていないけど、270GB/秒ぐらいではないかと言われている。メモリ帯域はMac Studioには劣るけど、このSoCを載せたPCの販売価格は3000米ドルぐらいになるといわれており、かなりお手頃だ。だって、Mac Studioは95GBモデルでも100万円弱するからね。そして、RTX Sparkは、何よりNVIDIAなのでCUDAが使える。これはAIを扱う上では圧倒的に有利。

A: CUDAって、なんでしたっけ。

B: CUDAを凄く簡単に言うと「GPUをグラフィック以外に使うためのライブラリみたいなもの」だ。オンデバイスAI、クラウドAI両方とも、そのほとんどがCUDA上で開発されている。単純にPC上でオンデバイスAIを動かすだけであれば、llama.cppみたいな汎用エンジンがあるので、CUDA関係無くMacでもAMDでも動く。でも、開発だけでなく、ファインチューニング※8みたいにAIに少しでも手を加えようとするとCUDAが必須になることが多い。つまり、AI開発、そして最適化にはCUDAが必須とも言えるので、そういった用途ではRTX Spark一択だろう。

A: なるほど。単純なユニファイドメモリのAIパソコンというだけで無く、NVIDIA GPUの強みが出てくるわけですね。

B: ちなみに、NVIDIAのAIサーバーでもユニファイドメモリのサーバーがある。Grace Hopperと呼ばれているんだけど、こちらは”CPU+RAM"と"GPU+VRAM"の二つのチップを、太い回線で強引に繋いでどちらのメモリにもアクセスできるようにしたという、Appleとかのユニファイドメモリとはちょっと違う構成のユニファイドメモリなんだよ。

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Grace Hopper(GH200)
CPUとGPUを超高速のNVLinkで接続することで、GPUからLPDDRへのアクセスも高速になる

A: そんなものもあるんですね。これをユニファイドメモリと呼んで良いのかは疑問ですが。

B: こんな変な構成でもAIが動くのは、実はCUDAのおかげ。CUDAがハードウエアの構成差をこっそり埋めてくれるから、開発側はそこまで気にしなくて良い。こういうメリットがあるからAI開発にはCUDAが使われるし、NVDIAのGPUが使われる、という背景もあったりする。

A: NVIDIA恐るべしですね。さすが謎の半導体メーカー。

B: 実際の半導体を作っているメーカーはTSMC※9なんだけどね・・・

それはさておき、NVIDIAがユニファイドメモリPC作っているということは、当然ライバルAMDも作るわけだ。それが、AMD AI Maxだ。最新のAI Max Pro+495のメモリは192GB、メモリ帯域もNVIDIAと同等の273GB/秒、GPUはRadeon 8065Sなんだけど、何と言ってもCPUがRyzenということだ。つまり、x86系ってことね。

A: ということは、純正のWindowsが動くということですね。

B: その代わりCUDAは動かないわけだけど、AMD AI Maxはx86だからWindowsのゲーム、アプリが確実に動くからね。RTX SparkはWindowsだけどCPUがARMなので、やっぱり互換性とかの部分で心配。一部のゲームはRTX Sparkにも対応すると表明はしているけど、全てのゲームとアプリが対応するわけでもないし。だから、オンデバイスAIもハイエンドゲームも、なんなら3D CGもCADも、とWindowsアプリの全てを使いこなしたいという人は、AMDがお勧めになる。

というわけで、Apple、NVIDIA、AMDと三者三様ではあるけれど、それぞれがユニファイドメモリで100GB超の巨大な高速メモリを搭載しオンデバイスAIを動かそうとしているってところは同じだ。特徴を改めてまとめるとこんな感じかな?

  • Apple Mac Studio: メモリ最大、メモリ帯域最大。巨大オンデバイスAIを動かしたいならこれ。もちろん、Macでの画像・動画編集にも。
  • NVIDIA RTX Spark(N1X): CUDA対応なので、AI開発したければこれ。ARMとはいえWindowsなので、普通のアプリもほとんど動く。
  • AMD AI Max: x86のCPUも、RadeonのGPUもどちらも安心。ゲームなどWindows PCとしても動くこと重視するならこれ。(WSLではない)普通のLinuxをOSにすることも可能。

A: なんか、新しい世界が始まろうとしている予感があります。ユニファイドメモリが当たり前の世界が来そうです。しかし、この流れだと、なにか一社足りないような気がするんですよ。何かがInsideされていないというか・・・

B: されてないね、Inside。でもね、二年前に作っていたんですよ、ユニファイドメモリのCPUを。Lunar Lakeというコードネームで。

A: 知りませんでした。それで、どうなったんですか?

B: Lunar LakeはCPU、GPU、そしてLPDDRメモリがひとつのパッケージに統合された最先端のプロセッサーだったんだけど、当時のIntelの工場では作れなくて、ライバルのTSMCに製造をお願いしたんだよ。つまり、Intelの看板製品なのに中身はTSMC製。

A: ああ、そういえば以前聞いたことがありました。Intelがついに自身で作れなくなったと。

B: その結果どうなったかというと、Wikipediaによれば、製品そのものの評価は良かったそうだが、TSMCへの外注費がかさんでしまい、Lunar Lakeは全く儲からなかった。そして、もうユニファイドメモリやめた!となった。

A: あらま。

B: けど、Intel以外は先ほどの三社に加えて、スマホのSoCの王者Qualcommもユニファイドメモリプロセッサーに力を入れている。もちろん、オンデバイスAIが流行れば流行るほど、ユニファイドメモリの優位性が目立つようになるだろうね。

さらに、NVIDIAとQualcommはARMをCPUとする会社だから、この二社の製品が広まるということはARMのWindowsが広まることになる。Appleシリコンが証明したように、ARM+ユニファイドメモリは省電力に動かせるから、ノートPC市場の方からARM Windowsがユニファイドメモリと共に一般的になっていく可能性は十分にある。しかも、Intelはそもそものx86でのシェアも下がり続けていて、今やAMDに3割近く奪われている。自作ゲーミングPCに限れば、AMDはすでに三分の二のシェアを取っている。ゲーミングPCの市場はPC全体の10%強と小さい市場ではあるけど、この市場で選ばれないってことは、Intelがすでに性能では選ばれていないってことを意味するので、その影響は小さくない。今現在はサーバー用CPUがIntelの生命線だが、性能で劣っているという評価である以上、いつまでもそれを維持できるとも思えない。

A: き、厳しい。あのIntelが・・・

B: まあ、どうなるかは神のみぞ知るだけど、PC業界に実は大きな転換点が来ているというのは間違いないと思う。

A: オンデバイスAIの話から、なんとも恐ろしい話になってしまいました。

LPDDRの奪い合い

B: さて、いよいよ本題なんですけど。

A: え?これまで本題じゃなかったんですか?

B: いや、もともとはなぜiPhone無印が出なかったのか?という話だったでしょ。

A: そうでした。

B: そこは、Mac Studio M5 Ultraの512GBモデルが遅延しているからも予想できる。

A: あ、もしかしてメモリが足りないとかですか?

B: そう。普通のPCの512GBメモリならDDR5なんだけど、M5 Ultraは512GBのユニファイドメモリでLPDDR5Xという最新のLPDDRを使う。一方で、iPhone 18はProだろうが無印だろうが、やはりこちらもLPDDR5Xを使う。いや、他のスマホだって、ハイエンドだったらほとんどの機種がLPDDR5Xを使っている。

A: もしかして、NVIDIAもAMDもLPDDR5Xだったりしますか?

B: その通り。Appleだけじゃなく、NVIDIAのRTX SparkもAMDのAI Maxも、なんならAIサーバーのGrace Hopperも、更に言えば失敗に終わったIntelのLunar Lakeも含め、現行のAI用ユニファイドメモリものは、すべてLPDDR5Xを使っているといっても過言ではない※10。

もちろん、最高級のHBMだって不足しているのだけど、その影響はAIサーバーに留まる。でもLPDDR5Xの不足は、スマホからノートPC、AI用PC、AIサーバーまで影響は幅広く出る。逆にというか、当然LPDDR5Xを作っている半導体メーカーはウハウハになるわけなんだけど。

A: うらやましい。それって、どこですか?

B: 韓国の、サムスン、SK Hynix、アメリカのMicronの三社で寡占だね。サムスンなんかは半導体もスマホも両方作っているが、スマホ部門は半導体部門に足元見られてるって報道もあったね。「身内だから」という理由での優遇は一切なくて、外部の顧客と同じようにシビアに交渉される。だから、サムスンのスマホなのにライバルのSK Hynix製メモリが載っている機種もあるらしい。

A: いや、サムスンは冷徹ですね。それが、あの会社の強さなのかもしれませんが。

B: 間違いなく言えるのは、世界的にLPDDR5Xの需要は急騰していて、その影響はスマホに留まらずPCやサーバーにまで波及しているということ。報道によれば、これまで強気の契約で数々の部品メーカーを泣かせてきたAppleでさえ、現在はメモリメーカーとの交渉で煮え湯を飲まされているという状況だそうなのでね。

A: そうなんですね。あの、Appleが。

B: そして、冒頭でも話したとおり、Apple A20チップがTSMCでも最新の2nmプロセスであることもiPhone無印遅延の大きな理由。ご存じの通りTSMCは様々なメーカーからの注文が殺到していて、生産能力が追いつかない状態が常態化している。しかも、最新プロセスは台湾本国にある最新工場でしか生産できないから、そこも遅延する原因の一つ。

A: TSMCのボトルネックはずっと言われていますよね。これまでの話を強引にまとめると、もともとTSMCの2nmプロセスの半導体の製造が逼迫している状況だったことに加えて、ユニファイドメモリの登場によりデスクトップ用途でもLPDDRを使う様になったためこちらも逼迫し、さらに今後はメモリを大量に使うオンデバイスAIの登場によりLPDDRの需要は今以上に高まる可能性が高い、そんなところでしょうか?

B: 完璧だね。それに付け加えるとしたら、AIとは直接関係ないように見えるDDR4とかDDR5とかのRAM用のメモリも需給が逼迫しているということかな。こちらは、AIサーバーにも大量に使われているのに加えて、高価で儲かるHBMに製造ラインをガッツリ奪われているらしいかららしい。

A: やはり、利益が大きい製品が優先されるんですね。

B: そう。まさにiPhoneと同じ構図だ。限られた部品と生産枠の中で、利益率の高い「Proシリーズ」が優先されて先に世に出るのは、企業として至極当然の判断なんだよ

まとめ

A: さて、長くなりましたのでまとめをお願いします。

B: 簡潔にまとめれば、「今回は、iPhoneの話をしつつ、実はスマホ、ノートPC用のメモリであったLPDDRがデスクトップPCやサーバーにも使われるようになってきていて、需給が逼迫しているという話をしました。で、そのキーとなるのがユニファイドメモリにあるということでした。」で、いいかな。

A: いや、意外でした。スマホ向けのLPDDRが、ユニファイドメモリによってGDDRほどの速度にできるなんて。このメモリ帯域を見せられると、今後はユニファイドメモリが主流になりそうな気がします。

B: 確かにそうではあるんだけど、ユニファイドメモリのデメリットを最後に言っておこう。

A: デメリットなんてあるんですか?

B: ある。ユニファイドメモリのデメリット、それは・・・ 高くなることだ。

A: え?

B: LPDDRでメモリ帯域を上げていこうとすると、どうしても価格が高くなる。例えば、GDDRはGPUと繋がるバス幅はそこそこでも、書き出す速度が圧倒的に速い。だから高速。一方、LPDDRは、単体で見ればバス幅も狭いし、速度も遅い。だから、並列に沢山並べて、バス幅をGDDRより広くすることでGDDR並みの速度を出そうとする。

でも、このバスの幅を広くするって、コストがかかることなのよ。配線の幅が広くなってしまうので、チップなりシリコンなりの面積が大きくなってしまう。そうすると当然コストは上がるよね、半導体は「面積=価格」なので。実際のところ、LPDDRを使ってメモリ帯域をGDDRレベルへ上げようとした場合、決してGDDRより安くなるわけではない、らしいんだよね。そもそもLPDDRも安くはないので。とにかく、LPDDRはGDDRより小型で省電力になるのは間違いないので、サイズと熱が許容できるならGDDRで、許容できないならLPDDRで、というのが答えかな?

A: なるほど。ユニファイドメモリといえど、全てを解決できる魔法の技術ではないんですね。

B: そういうことなんだ。LPDDRを使うか、GDDRを使うかはメーカーの判断だけど、オンデバイスAIのモデルサイズだけメモリが必要となるという事実だけは変わらない。

そして、LPDDRを使おうと、GDDRを使おうと、LPDDRの価格が上がれば、同時にGDDRの価格も上がる、というのも変わらない。だって、作っているのはどちらもサムスン、SK Hynix、マイクロンだから。ラインをLPDDRに回すか、GDDRに回すかの違いでしかないので、メモリの出荷総量は変わらないからね。

A: え?じゃあ、これまでのLPDDRにするかGDDRにするか?なんて話は、メモリメーカーにとっては大差なくて、どちらになってもその三社が儲かるって話なんですか?

B: そうだよ。なんなら、HBMもその三社が作っているからね。結局、どれが流行っても一緒。

A: なんだか、夢が無い話になりましたね。

B: だから、今日いろいろ話したけど、Appleが勝とうが、NVIDIAが勝とうが最終的に何らかのメモリが必要なのは変わらず、そのメモリを作るのはメモリ寡占三社だからね。だから、オンデバイスAIが流行れば、最終的には三社と・・・ TSMCが儲かる、それだけ。

A: ちょっと待ってくださいよ! 結局TSMCって、スマホでもAIでもオチは全て同じじゃないですか!

B: 仕方ないでしょ。今日出てきたAppleシリコンも、NVIDIA RTX Sparkも、AMD AI MaxもすべてTSMCが作っているからね。「風が吹けば桶屋が儲かる」じゃなくて、「AIが流行ればTSMCが儲かる」そういうことだよ。

A: 世の中、夢がなさ過ぎる!

【社内雑談】iPhone18 ProもDuoもミリ波非対応 前編 後編

(担当M)

※6; 2026年3月に発売された廉価版MacbookであるMacbook Neoのこと。定価が99,800円と通常のMacbook Airの半分近くであり、さらに学生・教職員割引もあるため、大学生向けノートPCとして評価が高い。

※7; NVIDIAジェンスン・ファンCEOの事。公式発表の際など必ず黒い革ジャンを着用して登壇するため、彼のことを敬意を込めて「革ジャン」と呼ぶことがある。

※8; すでに学習済みのAI・機械学習モデルに対して、新たなデータを用いてパラメータの微調整(追加学習)を行う手法。ユーザーにとって必要なデータ、例えば業界の知識や社内のデータなどを学習させ、ユーザーにカスタマイズされたAIを作成することができる。

※9; Taiwan Semiconductor Manufacturing Company, Ltd.の略。漢字では「台湾積体電路製造股份有限公司」。世界最大の半導体工場(ファウンドリ)であるが、Intelやサムスンとは異なり自ら設計することはなく、受託製造を生業としている。製造技術で他を圧倒しているため、最先端の半導体(CUP、GPU、スマホ用SoC等)はこの会社でしか製造できない状態となっている。Apple、NVIDIA、Qualcomm、AMDなど数多くの半導体メーカーがこの会社に製造を委託している。

※10; より上位規格のLPDDR5TやLPDDR6も存在するが流通量が少なく、現在のところハイエンドノートPCやタブレットの一部に採用されるに留まっている。