LED通信事業プロジェクト エンジニアブログ

ジョイントを用いた連動可動 (ダミー油圧シリンダー)

記事更新日 2023年4月11日


はじめに

3DCADソフトのFusion360には、設計画面上で部品の形状を整えるだけではなく、画面上で部品の可動を行う「ジョイント」という機能が実装されています。 モーター直結の部品を回転させるような一軸可動であれば簡単にジョイントを設定できますが、連動して可動する部品を設定するのは少しわかりにくい点があります。
今回は、設計中のラジコンの部品を用いて、ブーム・アーム・バケットに取り付けたダミー油圧シリンダーをジョイント機能により連動して可動させる方法を記します。

設計中の部品

過去記事にて記載のブルドーザー型ラジコンをベースとして、油圧ショベルカー型のRaspberryPiラジコンを現在設計しています。油圧ショベルカーは特徴的な腕部を有しており、実際の重機であれば油圧シリンダーを使用してブーム・アーム・バケットの角度を可変させています。さすがにラジコンレベルで大掛かりな機構は実装できないので、サーボモーターを用いて各間接の可動を行うようにします。ちなみに、車体に近い方の腕がブーム、遠くてバケットにつながっている方の腕がアームとのことで、腕部全てまとめてアームと呼ぶわけでは無いようです。

fig.1
図1:サーボモーター可動のブーム・アーム・バケット

また、可動はサーボモーターで行うにしても、見た目だけでも油圧シリンダーがあった方が「らしさ」が強調できるので、ダミーの油圧シリンダーを実装することにしました。ダミーですので、あくまで連動して動くだけのお飾りの筒ですが、干渉部位がないか、筒の長さやリンクの位置は適切かといった部分は設計段階で煮詰めておかないと、お飾りどころか動作の邪魔になってしまう可能性があります。
弊社で設計に使用している3DCADソフトFusion360では、ジョイントという機能を用いてこれらの回転軸やスライダ軸の動作を部品に適用することが可能です。今回の記事では実際に部品にジョイントを設定して、設計が正しいか確認していきます。各部品のディティールが甘いのは大まかな設計段階ということでご理解頂けると幸いです。 それでは、最も簡単なサーボモーターの回転軸からダミー油圧シリンダーの回転軸、スライダ軸へと順に説明します。

サーボモーターの回転軸

一般的なサーボモーターは、DCモーター・ギア・制御基板を収納する本体と、外部からの信号で角度を指定できる回転軸を1本有しています。今回のラジコンは、サーボモーターの回転軸にブーム・アーム・バケットを接続していますので、Fusion360上でも回転軸にジョイントを設定して画面上で動かせるようにしていきます。
ジョイントの設定を行う際は、ツールバーのアセンブリからジョイントを選択します。回転動作のジョイントを設定するので、モーションタブから回転を選択しておきます。
まずは回転させたい部品であるブームの回転軸を指定した後、対応するサーボモーターの回転軸を指定すると、モーターの軸に沿ってブームが回転するジョイントを設定できます。ジョイントが設定できた箇所にはモーションに応じたマークが付与されます。(回転軸は旗のような形状)
同様にアームの回転軸、バケットの回転軸とそれぞれ対応するモーターの回転軸をジョイント設定することで、各可動部を画面上で動作させることが可能になります。

fig.2
図2:ツールバーからジョイントの選択
fig.3
図3:指定するモーター関連の回転軸
fig.4
図4:回転軸を設定したブーム・アーム・バケット

ダミー油圧シリンダーの可動軸

次に、ブーム・アーム・バケットに接続するダミー油圧シリンダー筒両端にある、穴の空いたヘッド部の回転軸をジョイントとして設定していきます。
設定方法はモーター回転軸と同様、ヘッドの回転軸を指定した後、接続する耳状の部分の穴を指定します。
ここまでジョイントが設定できると、各シリンダーの角度を維持したままブーム・アーム・バケットの角度を変化させるといったことが可能になります。

fig.5
図5:指定するダミー油圧シリンダー関連の回転軸
fig.6
図6:回転軸を設定したダミー油圧シリンダー

ダミー油圧シリンダーのスライダ軸

前章までは回転軸に関するジョイントを設定してきましたが、ついにダミー油圧シリンダーの要である伸縮機構です。ダミー油圧シリンダーは外側の筒と内側の筒で構成されており、筒同士はスライドして伸縮します。そのため、今回のジョイントの設定ではモーションタブからスライダを選択して伸縮する軸を選択していきます。
注意点として、ダミー油圧シリンダーの部品は、ブーム・アーム・バケットとは同一コンポーネントの同階層から移動させておく必要があります。(子コンポーネント収容でも可)
今回のスライダ軸は、ダミー油圧シリンダー内側の筒の外周部を指定した後、外側の筒の内周部を指定することでシリンダーの伸縮機構が有効化されます。
さらに、シリンダーはヘッドを介してブーム・アーム・バケットに接続されているため、各部の回転軸の角度を変更するとシリンダーも追従して角度を変えながら伸縮することができます。若干シリンダー長が不足している箇所や、リンク方法を変更した方が良い箇所が見えてきましたので、記事ではこのままですが、製造に向けて設計を修正することにします。

fig.7
図7:指定するダミー油圧シリンダーのスライダ軸
fig.8
図8:スライダ軸を設定したダミー油圧シリンダー

まとめ

以上、Fusion360にてジョイントを用いて連動可動させる方法でした。
連動して動作するジョイントが設定できると、可動する部品の設計に役立つだけでなく、3DCG的にCADを見せる際にも役立ちます。 より効率的な方法や機構的に正しい方法があるかもしれませんが、あくまで自己流ですのでその点はご了承頂ければ幸いです。