LED通信事業プロジェクト エンジニアブログ

USB Type-CからDC5Vを出力してDCファンを駆動

記事更新日 2025年1月14日


はじめに

これまで様々な実験器具を作ってきた中で、DC5Vの電源はType-Aのポートを持つ従来型のACアダプターからMicro USBケーブルを使って取り出すことがほとんどでした。何も考えずにVBUS・GNDピンを負荷側に接続すれば良いだけなので、とても楽なんですよね。
ただ、USB Type-Cも普及が進んできたことですし、最近購入したケーブルも末端がType-Cの製品ばかり。電力供給手段としてType-C対応は慣れておきたいところでもあるので、今回はUSB Type-CからDC5Vを取ってDCファンを駆動させてみます。

また、年始企画として、なかなか普及の進まないミリ波の未来について考える記事をアップしました。文章量の多い大作となっていますので、お時間のある際に読んでいただければ幸いです。

実験に使う器具

まずは実験に用いる器具の紹介です。

1:従来型 (USB Type-A) ACアダプター
2:USB Type-C ACアダプター
3:従来型 (片側A-片側C) USBケーブル
4:両端Type-C USBケーブル
5:USB Type-C 変換基板
6:抵抗実装USB Type-C 変換基板
7:テスター 8:DCファン (5V駆動)

fig.1
実験器具一覧

DC5V電源を取り出すにあたって、Type-A・Type-CのACアダプターや変換基板を組み変えて実験できるように器具を用意しました。
今回の記事では、上記器具を組み合わせて電圧の出力状況やファンの動作状況を確認していきます。

実験1-従来型ACアダプターとType-C変換基板

まずは従来型ACアダプターとType-C変換基板を用いた組み合わせで、電圧の出力状況を確認します。前章の器具番号としては1・3・5・7・8を使用します。

fig.2
実験1で用いる器具

では早速、ACアダプターから変換基板に電力供給し、変換基板のVCCとGNDから伸ばした配線にDCファンを接続します。この状態でコネクター部分の電圧およびDCファンの動作状況を確認します。
Type-C変換基板のVCC・GNDはUSB Type-AのVBUS・GNDに相当するので、当然5Vがそのまま吐き出されているはず。

fig.3
実験1の結果

ビンゴです、DC5Vの電圧が取り出せている様子が確認できました。DCファンも回転しています。
Micro USBを扱っているときと同じように扱えますし、変換基板もシンプルな構造で安く調達可能ですので、コストを抑えてType-Cから電源を取りたい場合はこれで十分ですね。

実験2-従来型ACアダプターと抵抗実装Type-C変換基板

それでは次の実験として、実験1から変換基板を抵抗実装のものに交換した構成を試してみます。器具番号としては1・3・6・7・8です。

fig.4
実験2で用いる器具

実験1同様、ACアダプターから変換基板に電力供給し、変換基板のVBUSとGNDから伸ばした配線にDCファンを接続します。実験1で用いた変換基板ではVCCでこちらはVBUS、印字は異なりますがUSB Type-Cのピンとしては同じ箇所なので、同じ機能を持ちます。この状態でコネクター部分の電圧およびDCファンの動作状況を確認します。

fig.5
実験2の結果

実験1と同様、DC5V出力とDCファンの動作が確認できました。
後ほど言及しますが、こちらのType-C変換基板には5.1kΩの抵抗が2個実装されています。後の実験で抵抗の有無が効いてきますので、頭の片隅に入れておいていただけると助かります。

従来型ACアダプターに設けられたUSBポートはType-Aであり、5Vが垂れ流しされているのでコネクタ形状を変換するだけで電力供給元として様々な機器に適合させることができます。

実験3-USB Type-C ACアダプターとType-C変換基板

それでは、今回の実験の主目的とも言える、USB Type-C ACアダプターを使用した構成での実験です。器具番号としては2・4・5・7・8を使用します。

fig.6
実験3で用いる器具

実験3ではUSB Type-CのACアダプターから変換基板に電力供給し、変換基板のVCCとGNDから伸ばした配線にDCファンを接続します。実験1のACアダプターとケーブルが変更された構成ですね。この状態でコネクター部分の電圧およびDCファンの動作状況を確認します。
果たして結果は実験1と同様になるのでしょうか?

fig.7
実験3の結果

DC5V出力が確認でき……ない!常時出力していた5Vが出力されなくなっていました。

従来型ですと電力供給元となるホスト機器にType-A、負荷側となるデバイス側では外付けHDDやプリンター等のType-B、モバイル機器を中心に使用されたMicro USB、PS3のコントローラーやデジカメに使われていたMini Bといった具合に、ホスト・デバイス間でコネクタ形状を変えていた一方で、Type-Cではホスト・デバイス共にType-Cが使われます。
この際、どちらがホストでどちらがデバイスか認識するために、Type-CにはCC1・CC2というピンが用意されています。CCはConfiguration Channelの略称で、ホスト側ではプルアップ抵抗が、デバイス側ではプルダウン抵抗が実装されている必要があります。
ホスト・デバイス間をType-Cケーブルで接続すると、CC1・CC2の抵抗による電圧変化から接続相手がホスト・デバイスであることを認識した後に、電力供給を行う手順が採用されています。両側がType-Cのケーブルでは、ホスト同士が接続する可能性があり、お互いに電力供給しようとする危険な動作を防いでいます。

実験1・3のType-C変換基板にはCC1・CC2にプルダウン抵抗が実装されていないことから、ホスト側から見ると変換基板はデバイスとして認識できないので、電圧が掛かっていない状態となっています。
そこで抵抗実装Type-C変換基板が活きてくるというというわけで、実験4に続きます。

実験4-USB Type-C ACアダプターと抵抗実装Type-C変換基板

それでは最後に、USB Type-C ACアダプターと抵抗実装Type-C変換基板を使用した構成です。器具番号としては2・4・6・7・8を使用します。

fig.8
実験4で用いる器具

実験3の無念を晴らすことはできるのか、変換基板のVBUSとGNDにDCファンを接続し、電圧とDCファンの動作状況を確認します。

fig.9
実験4の結果

DC5VおよびDCファンの回転が確認できました!
抵抗実装Type-C変換基板には、CC1・CC2に5.1kΩのプルダウン抵抗が各1個ずつ実装されているので、ホスト側は接続基板をデバイス側として認識することができます。

実験5-プルダウン抵抗追加

実験1・3で使用した変換基板も、CC1・CC2用のスルーホールが設けられているので、自分で抵抗を実装することもできます。せっかくなので実験3の構成に5.1kΩのプルダウン抵抗を追加し、ファンが駆動するか試してみました。

fig.10
実験5の結果

やはりプルダウン抵抗がCC1・CC2に実装されていると給電されます。
VBUS/VCCとGNDの2接点のみ設けられている最小構成の変換基板では難しいものの、今回のように多数の接点が設けられていれば、後から抵抗を追加することも可能です。もちろん最初から実装されている製品を購入するのがお手軽ですけれども。

おまけ

通勤時に使っているTWSイヤホン (両耳独立型のワイヤレスイヤホン) の充電ポートがUSB Type-Cでしたので、これまでの実験構成で用いたACアダプターを用いて給電可能か確認してみます。
確認するTWSイヤホンは SOUNDPEATS Truengine 3SE です。購入当時、中華多ドラ有線イヤホンにハマっており、TWSイヤホンでも多ドラの製品がないか探してたところ、手頃な価格で2DDの当該製品を見つけて以来愛用しています。最近はバッテリーにヘタリを感じたり、イヤホンをケースから取り出して1発目ではスマホとペアリングが完了しない持病を抱えていたりと、そろそろ買い替え時かと思いつつ本格的な故障に至らないので使用を継続しています。イヤホンの話はさておき、本題に入ります。

従来型ACアダプターと従来型USBケーブル、器具番号としては1・3を使用した構成と、USB Type-C ACアダプターと両端Type-C USBケーブル、機器番号としては2・4を使用した構成の2構成を用意します。それぞれイヤホンケースのType-Cポートに接続した際、ケース側の充電インジケーターの状態から、給電されているか否かを判断します。(USBケーブルが実験1~5から変わっていますが同等品)

fig.11
Type-C充電イヤホンへの給電状況

前者の従来型構成では給電されたものの、後者の構成では給電されない模様。これまでの実験結果から、このイヤホンケースのType-Cポートの奥、基板側のCC1・CC2にはプルダウン抵抗が実装されていないことが考えられます。
Truengine初代は充電ポートがMicroUSB、2からはType-Cに変更されましたが、ひょっとするとUSBポート周辺は初代の設計を3SEでも受け継いでいるのかもしれませんね。

本章で使用した製品は2021年に購入したもので、生産時期によって結果が異なる可能性があります。あくまで市場に出回っている製品の一例として紹介したものですので、ご了承ください。

まとめ

以上「USB Type-CからDC5Vを出力してDCファンを駆動」でした。
上記の実験により、Type-C変換基板としては抵抗実装のものを使用すれば、ACアダプターが従来型・Type-C仕様を問わず電力供給を受けられることがわかりました。

スマートフォンやPC、周辺機器に至るまでどんどん普及してきたUSB Type-C。筆者も2020年初頭にType-C対応のAndroid端末を購入した際、あまりの便利さに身の回りをType-Cで固めてきましたが、知識不足から自作機器に用いるのは躊躇していました。
今回の実験を通じて、ホスト・デバイスが認識されて初めて5Vを出力するため、常時電圧が掛かっている従来型よりもむしろ安全では、と考えるようになりました。5Vよりも高い電圧を扱うUSB PDについては、扱いが一層複雑になると記事執筆のための調査を通じて目にしましたが、果たして手を出す機会は訪れるのやら。

それでは、今回もご拝読いただきありがとうございました。

(担当Y)