LED通信事業プロジェクト エンジニアブログ
トイドローンTelloについて
記事更新日 2024年6月25日
はじめに
これまでとは少し風変わりなジャンルとしてドローンについて扱います。
LED通信事業プロジェクトは主として光無線通信関連技術を扱いつつも、社内的に経験のなかったジャンルを幅広く取り扱う開発部門です。
ドローンもその中の一つで、かなり昔ではありますが、離れた2点間を結ぶ無線アンテナの設置場所が見通し (過去記事でも触れていますが我々はLOSと呼びます) の取れる位置であるかを確認するため、DJI Phantom3という機体を購入して実験していたことがあります。
従来、コン柱を立てて設置を検討していた場所ではバケット車を現場に持ち込んで人が直接上がって確認する手間が掛かっていたので、ドローンを設置検討高度まで飛行させカメラで相手側を確認できればLOSが迅速に確認できるのではないかと考えていたのです。実験結果としては散々でしたが……
それもそのはず、標準で搭載されているカメラは広角レンズのため、kmオーダーの遠距離の物体は潰れてしまい画像では全然確認できなかったのです。
後に航空法の改正により三技協敷地内は国交省への申請無しでは飛行できなくなり、Phantom3はしばらく倉庫に仕舞われることとなってしまいました。
ただ、一度取り扱ったジャンルということもあり、航空法を含むドローン関連の動向について情報収集を続けていまして、紆余曲折を経て先日実験用にTelloという小型の機体を購入しました。
せっかく購入したのでブログのネタにしないともったいない!ということで、まずは機体の紹介を行います。次回は実際に飛ばしてみた様子や風を当て姿勢を崩してみた様子をお届けする予定です。
航空法の話
本題のドローン本体に移る前に航空法のお話です。
航空法を少しでも知っていないとTelloという機体の便利なところが伝わらないので、法律の話に対して拒否反応を抱かずにお聞きいただければと思います。
ドローンと呼ばれる無人航空機の普及に伴い、急速に飛行についての規制が増えていったことは、なんとなくご存じの方も多いかと思います。中でも、2022年6月20日より施行の改正航空法では、これまで以上に厳しい規制が加えられました。重量100g以上の機体はドローン情報基盤システムDIPSへの機体登録と発行された登録記号表示が義務化され、さらに1秒に1回以上、位置や速度、機体情報を含んだ情報を発信するリモートID機能実装が義務化されました。
2022年6月19日までに機体登録を済ませた場合、リモートID実装が3年間免除されます。3年間免除ということは、来年2025年の今頃に免除期間は終わりを迎えてしまいます。三技協保有のPhantom3については、いっそ義務化されるならと外付けリモートIDモジュールを装着しました。
現在実装が免除されている機体についても、リモートID標準装備機体への更新や外付け実装といった対応を考えないといけない時期がそろそろやって来ました。リモートIDモジュールもそれなりの金額なので、世代交代による性能向上を含めて機体更新が良いのではないでしょうか。
2022年の前にも、2015年12月10日施行の改正航空法により無人航空機飛行禁止エリアが設定され、飛行禁止エリア飛行の際には国交省や航空局の承認を得るという規制が設けられました。当時はオンライン申請できるシステムも無く、国交省担当者へ郵送で書類申請していたことを思い出します。
今はDIPSのおかげでずいぶんとシンプルに申請できるようになりましたが、飛行禁止エリアに三技協本社敷地が含まれているために、練習飛行が必要になった際には何度か郵送で申請を行っていました。
飛行禁止エリアの話をすると「私有地なのに飛ばせないの!?」と驚かれることがありますが、その通りです。無申請では飛ばせなくなってしまいました。正確には人口集中地区=DIDに指定されているため飛行禁止エリアに該当してしまい、無申請では飛ばせなくなってしまったのです。
簡単に飛行禁止エリアを説明しますと、航空機の飛び交う空港周辺、警察や消防が災害対応を行っている緊急用務空域、地表又は水面から150m以上の高さの空域、そして人口集中地区の上空です。
人口集中地区は聞き慣れない方も多いと思いますが、意味は字面の通りで人口密度の高い地域が指定されており、三技協本社も人口密度の高い地域に本社を構えているので飛行禁止というわけです。弊社敷地内で飛行させる際は、飛行禁止エリアですが一定の安全対策を機体・人ともに行うので飛行させてくださいと国交省に申請し、申請内容に不備がなく受理されれば晴れて飛行可能となります。
ここまで長々と航空法についてお話してきましたが、ドローンを飛ばすと一言に申しましても、様々な手順を超えてようやく飛ばすことができるのだということをご理解いただけたかと思います。
そして、多くの方がもうお腹いっぱいだと感じたことでしょう。筆者も書いていて疲れ果てました。しかし法律は法律、遵守しなければなりません。
ここで思い出してほしいことが、重量100g以上の機体というワードです。航空法の規制対象となる機体は重量100gを境目にして決まるのです。重量100g未満の機体は無人航空機ではなく模型飛行機として扱われるので、機体登録や飛行申請無しで飛行させられるのです。
まさに今回書きたかったTelloという機体は重量約80gの模型飛行機に該当する機体です。
機体登録不要なのですが、会社所有物であるという管理の都合や万が一のための保険加入のために、DIPSに機体登録を行っています。そのため、本体には発行された登録記号を表示してあります。ブログ用に黒テープで隠していますが、普段はテープは無く登録記号が見えるようにしていますので、あしからず。
一点注意として、筆者としても無責任にどこでも飛ばしてOKと言うつもりはなく、模型飛行機扱いでも飛行NGな場面はあります。
公園での飛行を条例で禁止している地域もありますし、航空法ではなく小型無人機等飛行禁止法という法律により制限される地域もあります。政治関連施設や外国公館、防衛関係施設や空港、原発周辺といった重要施設周辺では、機体重量を問わず飛行NGとなっています。
重量100g未満の機体は確かに規制が緩い面はありますが、何をやっても許されるわけではありません。航空法以外の規制も遵守して飛行させましょう。
Tello
いよいよ本題、Telloについてです。
Tello公式ページはこちらです。RyzeTechというメーカーが製造しているドローンで、筆者はセキドオンラインストアにて購入しました。TELLO BOOST コンボというセット商品と専用キャリーケースを一緒に注文しましたが、執筆中にページを確認すると予約商品となっていたので、いつの間にか売り切れたようです。
重量約80gで無人航空機ではなく模型飛行機に該当する機体ですので、DIPSへの機体登録や飛行申請なく飛行させることができます。
ここで注意していただきたいのは、申請無く飛行させられるからといっても、屋外で飛行させるには心もとない性能であるという点です。極めて軽量な機体なので、Phantom3のような屋外飛行の安定性を求めて良いものではないですが、屋内無風環境での安定性には素直に驚かされました。軽量コンパクトさを活かしてメインは屋内での練習飛行、無理をしない範囲での屋外飛行もできる機体です。
機体にはレンジファインダー、気圧高度計、ビジョンシステムが搭載されているとのことです。
レンジファインダーというのが、機体裏面に3つ並んだ黒い丸の両脇部分のことでしょう。電源を入れると片側が赤く発光するので、赤外線LEDとフォトダイオードを使ったToFセンサーとして機能していると考えられます。また、2つの黒丸間に存在する小さい黒丸がビジョンシステムとして用いられているカメラかと思います。ラズパイのカメラモジュール等で、この形状には見覚えがあります。気圧高度計は機体内部の見えない場所にあるのでしょう。
ちなみにGPSは搭載されていません。そもそも屋内ではGPS信号を取りづらいですし、このようなセンサー構成からも、屋内メインの機体であると感じさせます。
モーターはブラシレスではなく小型のコアレスモーターを使用している模様。昨今は100g未満の機体でもブラシレスモーターを搭載する機種があると聞きますが、コアレスモーターだからといって決してブラシレスモーターに見劣りするわけではありません。機体が軽いので飛行性能としてはコアレスモーターでも必要十分だと感じますし、電力消費が抑えられる分飛行時間が確保できます。その機体に何を求めているかで、どちらのモーターを実装してほしいのかが変わってきます。
プロペラガードは機体標準装備のものを使用しています。屋内メインと考えると全周囲うタイプの方が安全なのですが、ケースに入らなくなるので標準のままです。機体規模が小さいということもあり、墜落・激突時のダメージも比較的小さいので標準のものでも十分機能してくれます。
アームに貼っている赤テープは再帰反射テープで、機体の視認性を向上させています。
また、アームから伸びる紐は係留紐を掛ける場所です。屋外飛行時に明後日の方向に流れないようにするために、釣り糸を使った係留紐を作成しました。飛行性能は次回記事にまとめますが、やはりGPSなしでモーターも非力とあって、風が吹くと流されてしまいますので、屋外飛行させる際の係留紐は必須だと感じました。
まとめ
以上、トイドローンTelloについてでした。
ほとんど航空法の話ばかりしていた気がします。このような玄人向け機種の情報を求めて来訪された方には、釈迦に説法だったのではないかと若干心配に思います。
前段が長くなってしまったので機体の紹介で終わりましたが、次回は屋内・屋外で飛行させている様子をお届けします。
それでは、今回もご閲覧いただきありがとうございました。通信以外にも皆様に小ネタを提供できたらと思いますので、よろしくお願いいたします。