LED通信事業プロジェクト エンジニアブログ
OLEDCOMM Li-Fiの紹介
記事更新日 2022年5月10日
はじめに
このブログを始めたおかげかわかりませんが、最近は我々三技協へLi-Fiの事について問い合わせを頂くことが増えています。以前からこのブログをお読みになっている方であれば、何度も繰り返しLi-Fiを扱いましたのでご存じかとは思いますが、このページで初めてLi-Fiを知るという方のために簡単に説明いたします。
Li-Fiというのは、WiFiを光で代替しようというコンセプトで、天井に設置した親機からユーザーの子機に向かって光を出し、通信をするというものです。言葉より、絵を見て頂いた方が早いと思いますので、先ずはご覧下さい。
多くの用途ではWiFiで事足りる(というかWiFiの方が性能がいい)訳ですが、光の方が有利な場面も少ないながらあります。例えば、病院や工場などの電波が使いにくい環境。例えば、学校のような数多くの端末が密集して通信するような空間。こういったシーンでは、電波では無く、また電波のように必要以上に広がらない光無線通信のメリットが出てきます。
我々は同じ光無線通信でも、LEDバックホールという比較的長い距離を1対1で結ぶ機器をメインで商売をしていました。しかし、「光無線通信で商売するものとしてLi-Fiを扱わないというのはいかがなものか?」ということで、今はLi-Fiの方の取り扱いも行っております。そして、我々が取り扱っているLi-Fi製品の一つがフランスのOLEDCOMMの製品です。日本語では"オレドコム"と読むのが一番近いと思います(フランス語の発音は難しい…)。
今回のブログでは、その我々の取り扱っているOLEDCOMM製品を紹介したいと思います。我々が取り扱っているから言うわけではありませんが、OLEDCOMMのLi-Fiはおそらく今世界で唯一の「普通に買えて、普通に動く」Li-Fiだと思います。このLiFi業界は正直まだ立ち上がったばかりなので、この「普通に買える」というのも結構難しいことです。”まだ研究段階だからNDA(機密保持契約)を結ばないと買えない”とか、そんなことも多いのが現状です。しかし、OLEDCOMMのLiFi製品は、自由に買って自由に使って頂けます。
しかし、どんな製品があるのか?も説明しないで買って下さいとは言えませんので、本ブログでOLEDCOMMの製品を3つぼど紹介することにいたしました。ただ、単なる製品紹介では単なるオフィシャルな宣伝になってしまいます。それでは、このブログの意味も無いので「エンジニア」としての視点を入れた上での紹介とさせて頂きたいと思います。
LiFiMAX Small Area
概要
LiFiMAX Small Area(以下LiFi SA)はOLEDCOMMの最初のLi-Fi製品で、基本とも言える製品です。親機と子機というオーソドックスなLi-Fiの構成をとり、特に設定も不要で設置するだけで使用できるというシンプルな製品です。
装置の紹介
Li-Fiですから天井につけるAccess Point(AP)とPC等に繋げるドングルに分かれます。WiFiと同じように親機と子機の関係です。LiFi SAにはWi-Fiルーターのようなルーティング機能はありません。Wi-Fiでいうところの「ブリッジモード」で動くと考えて下さい。
Li-FiといってもメーカーであるOLEDCOMMは、見えない光である「赤外線」を使用して通信する製品を製造しています。ですから、見える光は出ていませんので「照明と兼用」することはできません。(これから紹介する他の商品も全て同じです)
APには100Base-TXのPoEで接続します。ACアダプタ等での動作には対応していません。100Baseであるため、LiFi SAシステムの最大通信速度は100Mbps(のちょっと下ぐらい)となります。複数のドングルが配下にいる場合は、その100Mbpsを時分割で分けることになります。
ドングルにはUSB(Type-C)の口がついていて、これをPC等と接続すればイーサポートとして認識します。電源もUSBからとります。一般的なUSBのLANアダプター(例えばこれ)と同じです。ですから、WindowsやMAC、LinuxやラズパイなどUSBイーサの標準ドライバーを積んでいる装置なら認識できます。それ以外にもType-Cの口を持つような(一部の)Androidスマートフォンでもご利用頂けます。
1台のAPには16台までのドングルが繋げられます。といっても、APの通信範囲にそれだけのドングルが集まることはないでしょう。APは通常2~3mの天井につけることを想定していて、APスペック上の通信角度は最大90度(±45度)となっていますので、通信可能エリアはせいぜい半径2m程度です。ですから、おそらく実用上は片手で足りる程度のドングルを繋げるのが精一杯となります。
製品の構成
APとドングルはそれぞれ別々に購入することができます。また、1台のAPと2台のドングルがセットになった「標準セット」も販売しています。
想定される用途
このSmall Areaは単体で動かすもので、AP同士の連携とかは想定されていません。ですから、小さな会議室の机の上など、限られた場所での使用しかできません。ですから、Wi-Fiとは別の無線回線を使いたい場合、例えば社内LANとは分離させているプロジェクターとの接続などの用途が考えられます。また、値段もお手頃ですので、「単純にLi-Fi製品を試してみたい」という技術系の方にもお勧めです。
LiFiMAX Large Area
概要
LiFiMAX Large Area(以下LiFi LA)は、ある程度の広さをカバーするために作られたLi-Fi製品です。1つの光無線送受信機で広いエリアをカバーするのが物理的に難しい(LEDの光はそれほど広がらない)ため、複数の送受信機を使って広いエリアをカバーしようという発想で設計されています。
製品の紹介
LiFi LAは
- 1つのそれ単体では無線通信を行わない「インテリジェントAP」
- 親機であり実際に光無線通信を行う複数の「光アンテナ」
- 子機であるPC等に接続して使う「ドングル」
という3つの装置で構成されます。
光アンテナは単体では動かず、必ずインテリジェントAPに接続して使います。1台のインテリジェントAPに光アンテナは6台まで接続できます。そして、その6台で教室1つ分程度の広めのエリアを構築するという構成になっています(図5)。LiFi SAのはAP同士で連携できませんでしが、このLiFi LAでは光アンテナ同士で連携できますので、端末から見たら6台の光アンテナが作る大きな光無線通信エリア内で通信しているのと同じこととなります。
光アンテナ1台あたりの最大通信速度はおよそ130Mbps程度です。インテリジェントAPの出口は1000Baseのイーサネットのため、システム全体としての最大通信速度は1Gbpsとなります。尚、光アンテナの電源はインテリジェントAPから提供されるため、各アンテナに電源を接続する必要はありません。また、インテリジェントAPはPoEで動きます。
ドングルの方はLiFi SAのものとさほど変わりません。LiFi SAは丸形でUSBケーブルを介してPC等と接続することになっていましたが、LiFi LAのドングルはモバイルルーターと似たようなスティック型となっています。
製品の構成
1台のインテリジェントAP、6台の光アンテナ、8台のドングルを1セットとして販売しています。
想定される用途
LiFi LAは、主に学校教室での使用を想定している装置です。
教室では、WiFiだとユーザーが密に存在しすぎていて干渉で速度が出しにくい状況が発生しています。例えば、全ての教室でWi-Fiを使うとすると、自分の教室だけで無く、上下左右様々な教室からの電波が飛んでくることが想定され、干渉は激しくなります。Li-Fiであれば無線リソースが隣や上下の教室に飛び影響を与えることはないため、各教室で安定した通信が確保できます。
LiFiMAX P2P
概要
LiFiMAX P2P(以下LiFi P2P)は、上の2製品とは異なり1対1で通信する装置です。ただし、1対1といっても弊社製造のLEDバックホールのように比較的長距離を目指したものではなく最大5m程度の通信しかできませんが、その代わり最大1Gbpsという高速の通信が可能となった製品です。
製品の紹介
LiFi P2Pは、LiFiとは名前が付いているもののLiFiとして使うことは全く想定されていません。しかも、1対1しか通信できないにも関わらず、通信可能距離も普通のLiFiと大きく差はありません。それではこの製品の特長は何かというと、最大通信速度が1Gbpsだというその一点につきます。光無線通信で通信速度1Gbpsを出せる製品は殆どなく、LiFi P2Pはそのうちの一つです。
この製品が1Gbpsを出せるのは、光源としてLD(レーザーダイオード)を使用しているからです。前述の2つのLiFi製品はLEDを光源としておりました。LDはLEDと比較すると通信性能が圧倒的に高いです。そのためLEDに比べてLDはかなり高速に通信することが可能です。ただし、LDというデバイスはまだ過渡期です。LEDと比べ高温環境に弱いですし、信頼性も高くありません。ですから、LiFi P2Pは屋外や過酷な環境で長期間安定して使用するという用途には向いていません。
製品の構成
同じ機器2台一組で販売しています。この2台の間で通信を行います。前述の製品と異なりACアダプタで動作します(ACアダプタ付属)。
想定される用途
売る側としてこういうことは言ってはいけないのかも知れませんが、LiFi P2PはLiFi用途でもバックホール用途でも使えませんし、製品の完成度も前述の2製品に劣りますので、実環境で使うというのは難しいです。ですから、もしこの製品の購入を希望されるのであれば、「高速な光無線通信の実験や検証を行いたいという方のための試験装置」であると割り切っての購入を推奨致します。
まとめ
以上3製品を紹介しました。OLEDCOMMのあるフランスでは、セキュリティが必要な軍事向けや、密集しても使えるスマートシティ向けとして、Li-Fiが徐々に広がりつつあるようです。もし、この記事を読んでOLEDCOMMのLiFiに興味を持たれた方は、是非、こちらよりお問い合わせ下さい。