LED通信事業プロジェクト エンジニアブログ

LED Backhaulを用いたリンクアグリゲーション (LACP) 検証

記事更新日 2022年8月23日


はじめに

LED Backhaulを用いた通信環境構築において、常設での利用を検討されているお客様からリンクアグリゲーションを用いた冗長構成についてお問い合わせを頂く機会が増えてきましたので、弊社にて検証を行った結果を今回は記します。

リンクアグリゲーション

複数の物理ポートを論理的に1本の線に見せて冗長構成や負荷分散を行うL2の機能です。 例えばリンクアグリゲーション対応のスイッチ間を2本のLANケーブルで接続することで、2本生きている間はそれぞれのポートに負荷を分散させたり、2本どちらか一方の線が故障した際に残った1本で通信を継続することができます。 今回は冗長性についての確認のみとなり、負荷分散については未確認です。

試験系

リンクアグリゲーションにはStaticとDynamic (LACP) の2種類があります。無線通信機器であるLED Backhaulを使って通信環境を構築する場合、スイッチとLED Backhaul間の接続に問題がないものの光無線区間にて遮蔽物が入って光が遮断されて通信経路として無効化されるという状況が考えられます。そのような場合、LACPで組んでおけば遮蔽されていない生きている方の回線に通信経路を自動で切り替えることが可能です。各機器の接続は図1・図2の通りで、事前設定等以下に記します。

fig.1
図1:実機での構成風景
fig.2
図2:機材構成

LACP対応のスイッチとしてNETGEAR製GS308Tを2台用意して試験系に組み込んでいます。事前設定としてポート5~8をリンクアグリゲーショングループ (LAG) ch1に、対向器機からLACPフレームが受信出来なかった場合にその通信経路がダウンしていると見なして他の経路に切り替える待ち時間であるLACPタイムアウトはショートに設定してあります。標準ではロングに設定されており、通信経路切り替え時間の実測値としてロングの場合は約80秒、ショートの場合は約3秒となっています。また、機材一式を組んだ段階でLAG設定画面から、LED Backhaul 2セットが接続するポート7・8がアクティブポートとして認識されているか確認しておきます (図2下部) 。

ネットワーク負荷装置にはNECネッツエスアイ製AccessOneを2台用意し、それぞれ送信・受信として試験系に組み込んでいます。LED Backhaulのリンクスピードが500Mbps強だったため、負荷がリンクスピードを上回らないようAccessOne_01 (送信) の負荷を400Mbpsとして設定し、AccessOne_02 (受信) に向けて負荷を送ります。受信側のAccessOneには現在の受信速度が表示されるので、疎通確認は画面表示の目視を基準としています。回線切替に要する秒数やパケットロスの検証というよりも、あくまでLACPでの冗長性確保ができるか否かの検証を主目的としているのでご了承下さい。

通信経路としてはLED Backhaulを4台2セット用意し、GS308T_01・02間に2本の通信経路を確保した状態にしておきます。既に記した通り、2セット共にリンクスピードは500Mbps強でした。方向調整を行えば性能をフルに発揮できるのですが、あくまで線が張れていれば良いという試験内容なので、このまま進めます。

試験 1:送信側LED Backhaulの接続解除

図2にて図示した機材構成にて、まずはAccessOne_01から02に向けて負荷を掛けます。その際、GS308T_01・02のポートにあるインジケーターランプの点滅から、ポート7・8のどちらの通信経路に負荷を流しているか確認しておきます。 今回はポート7側にて負荷を流している状態でしたので、AccessOne_01 (送信側) から最も近い位置にあるLED Backhaulとスイッチ間のLANケーブル、図3中の線番号02を除去した際の動作を確認します。

この際、送信側スイッチに直結する機器が接続解除されたため、LANケーブルの除去から即時ポート8側の通信経路に切り替わることが確認できました。

fig.3
図3:操作箇所1

試験 2:受信側LED Backhaulの接続解除

試験1と同様にAccessOne_01の負荷がどちらのポート経由で流れているか確認し、試験2では光無線通信区間を挟んだ先のLED Backhaulとスイッチ間のLANケーブル、図4中の線番号04を除去した際の動作を確認します。

試験1では通信経路が即時切り替わりましたが、今回はLANケーブルの除去から約3秒後、LACPタイムアウトを待った後にポート8側の通信経路に切り替わることが確認できました。

fig.4
図4:操作箇所2

試験 3:光無線通信区間の遮蔽

試験1と同様にAccessOne_01の負荷がどちらのポート経由で流れているか確認し、試験3では光無線通信区間を遮蔽して通信経路を途絶させた状態である、図5中の線番号03を除去した際の動作を確認します。

試験2と同様に、光無線通信区間の遮蔽から約3秒後、LACPタイムアウトを待った後にポート8側の通信経路に切り替わることが確認できました。

fig.5
図5:操作箇所3

まとめ

以上、試験1~3より、送信側・負荷側のLED Backhaulとスイッチ間のLANケーブルを除去した場合の通信経路切替え時間は即時、それ以外の場合はLACPタイムアウトを待ってから通信経路が切り替わることが確認できました。

リンクアグリゲーションそのものはスイッチ側の機能のため、LED Backhaul単体で機能するのものではないので適切な機種選定が必要となりますが、通信経路に冗長性を持たせたいという要望に対する回答となっていれば幸いです。