LED通信事業プロジェクト エンジニアブログ
3Dプリンター関連情報 (2022年7月現在)
記事更新日 2022年7月5日
はじめに
昨今3Dプリンター関連で気になるニュースがありましたのでそちらに関する感想と、個人的な機材の導入状況について今回は記していきます。
トヨタ自動車による3Dプリンター導入事例
トヨタ自動車がさらなる3Dプリンターの活用を視野に、HPの3Dプリンティングソリューションを導入 [2022年6月15日 株式会社 日本HP] (外部リンク)
廃番となった部品を供給するため、2021年から3Dプリントした部品を純正部品として販売していたトヨタ自動車が、試作品製造や小ロット部品製造への3Dプリンター活用を視野にHP Jet Fusion 5200シリーズを導入しました。
HP Jet Fusionシリーズは外注3Dプリントサービス経由で弊社も利用しており、同技術によって製造された部品を実験に活用しています。
自動車における廃番品の再供給としては日産自動車・日産モータースポーツ&カスタマイズとサプライヤーによるNISMOヘリテージパーツという事例があり、こちらも3Dプリンターを活用した部品製造・供給を一部行っています。
自動車に限らず家電類も年数が経つとメーカーからの部品調達が難しくなり、軽微な部品交換ができないがために買い替えを余儀なくされるケースがあります。3Dプリンターを活用した部品供給により、保守部品や金型の保有といったメーカーの負担を削減しつつ製品寿命の延長やサポート体制の変革に繋がることを期待しています。
SDGsが求められる世の中で、環境性能が向上した新製品に買い替えることもエコですが、古い製品を修繕して使い続けることも廃棄物の削減に繋がることから、これも一つのエコと言えるのではないでしょうか。
※壊れかけの製品を無理して動かし続けた結果事故に繋がる可能性もあるので、上記内容とは反しますが買い替え時の見極めは行いましょう
水洗いレジン導入
弊社で実験用治具作成に活用している光造形3Dプリンターは、機材導入時からIPA洗浄レジンを使い続けてきました。しかし、IPA洗浄がどうしても手間だったので、ちょうどレジンのストックが尽きたこともあり、物は試しと水洗いレジンを購入してみました。
購入したレジンはANYCUBICの水洗いレジン、色は黒です。
従来使ってきたELGOOのIPA洗浄レジンと比較して、未硬化状態では水のようにサラサラしており、着色料撹拌のためにバットを揺すると縁から溢れ出そうになります。一方で、造形後はプラットフォームを傾けるだけでレジンが流れ落ちるので、未硬化レジンのバットへの回収は非常に容易です。
造形後は水道水とブラシだけで洗浄できるので、IPA洗浄レジンよりも効率的に造形後の後処理を進めることができます。洗浄の容易さから未硬化レジンの洗い残しを抑えることができるので、造形物にべとつきがほぼ残らない利点もありました。
造形物はクリアブラックのような色合いで少し透明感があります。二次硬化後にカッターの刃を当ててみると、硬質な熱可塑性樹脂のように若干粘る感触があり、IPA洗浄レジンでは刃を当てた箇所が小さく欠けていくような感触でした。個人的な感想ですが、プラモデルを作ったことのある方には水洗いレジンの削り心地の方がより自然に感じるのでは、と思いました。
一般にIPA洗浄レジンの方が水洗いレジンよりも物性が良いと言われていたので、手間は造形時だけだと受け入れてIPA洗浄レジンを使ってきました。しかし、いざ水洗いレジンを使ってみると感動モノの扱いやすさに驚き、余分に色々と造形を回してしまいました。
物性を重視するのであれば納期とお金は掛かりますが外注3Dプリントサービスで様々な素材・造形方式を選択することができますし、弊社のような卓上レベルでの運用であれば最初から水洗いレジンを選択していれば良かったなと思わずにはいられませんでした。
しかし、レジンは洗浄方法だけではなくメーカーによる差異も大きい領域で、全ての水洗いレジンで同様の特性が得られるとも限りません。メーカーによっては、果てはロットによっては洗浄中の吸湿による変形や破損が見られるケースもあるようなので、レビュー等を参考にして選定に失敗する確率を減らしたいところです。
まとめ
以上、トヨタ自動車による3Dプリンター活用事例のニュースと新たに導入した水洗いレジンに関する内容でした。
大手企業によって3Dプリンターの適材適所な活用方法が開拓されることで、製造現場において試作以外にも活用できる分野が広がっていけば嬉しく思います。
また、家庭用3Dプリンターはトライ&エラーで経験値を積むしかないので、新しいレジンを扱ってみた際の感触を記事として残してみました。