LED通信事業プロジェクト エンジニアブログ
開発を支える技術 外注3Dプリントサービス
記事更新日 2021年7月27日
はじめに
すっかりブームが一段落してしまったように感じられる3Dプリンターですが、弊社ではLED Backhaulの製品開発初期段階から外形の検討や検証作業のため、外注サービスや自前の3Dプリンターを活用してきました。 弊社では熱溶解積層方式の3Dプリンターを保有し、平均して週一回の頻度で使用している立場としてはオフィスに一台あると便利なのですが、人間の手を介さないと動かない「工作機械」の域に留まっていることが、初心者には扱い難い代物となっているのではないかと感じます。とくに、取り扱い者の経験を土台とした3Dプリンター本体や造形物の調整といった職人技を求められる点が非常に重く伸し掛かってきます。そんな3Dプリンターについて、製品開発や検証に活用するユーザーとしての立場から、業務に活かすアイディアをご紹介できればと思い、連載として取り上げます。 連載の第一回、取り扱いの難しい3Dプリンター本体は自分で触らず、便利な面だけ享受しようということで、外注3Dプリントサービスを使う際の流れについて書き記します。
外注3Dプリントサービスの流れ
法人・個人問わず利用しやすい外注3DプリントサービスといえばDMM.makeが有名で、耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。今回はDMM.makeを前提として注文の流れについて記載しますが、他社サービスのため詳細に記せないことをご了承下さい。
まず、どんな3Dプリントサービスを利用するにしても、造形したい3Dモデルがなければ始まりません。3Dモデルは正確な寸法を元に設計を行う3DCADや、有機的な造形を得意とする3DCGといったソフトを使って作成します。どちらのソフトにおいても”STLファイル”がエクスポートできれば良いので、目的や予算、自身の好みに応じて選択しましょう。弊部では3DCADはAutodesk Fusion360、3DCGはBlenderを使用しています。 自身での3Dデータ作成が難しい場合には、様々なユーザーが作成した3Dデータを配布するプラットフォームからデータをDLして活用する手段もあります。利用規約を確認し、造形を外注サービスに委ねて問題のないものだけ依頼するようにしましょう。
3Dデータが用意できたら、3DプリントサービスにSTLファイルを送付します。自動・または人力でのチェックが入り、送付したデータに不備がなければ造形に進むことができます。 よくある不備としては、3Dモデルの面が閉じられていない、細かい部位がプリンターで造形できる最小寸法を下回っているという点があげられます。不備が確認できた場合、3Dモデル作成ツールに戻って修正しましょう。
次に素材及び造形方式を選択します。値段や精度、造形可能なサイズの観点から扱いやすい素材はナイロン素材で、ナイロンの場合は粉末焼結方式によって造形されます。代表的な造形方式は以下の3点で、とくに粉末焼結方式は3Dプリンター本体が大型で高価なため、装置の現物を見たことのある人は少ないのではないでしょうか。(私も見たことありません)
- ヒーターによって溶かした素材をノズルで絞り積み上げて造形する熱溶解積層方式
- 紫外線で硬化する液体樹脂で満たした液槽に紫外線光を照射して造形する光造形方式
- 1層ずつ敷き詰めた粉末ベッドにレーザーを照射して固める粉末焼結方式
透明性を重視したアクリル素材は光造形方式、汎用的なエンジニアリングプラスチックのABSは熱溶解積層方式によって造形されます。その他にも金属やゴム質の材料もあり、ユーザーは造形物を利用する環境や目的、予算に合わせて素材を選択するだけで、それぞれの素材に適した方式で造形されます。 3Dモデルと素材が決まったら注文を確定しましょう。 ナイロンであれば、通常約2週間で造形物を受け取ることができます。
外注する利点と欠点
自前の設備で造形する場合、造形物ごとの微調整を求められることも多いので、そのような面倒事の一切を任せられるのは非常に楽です。しかし造形物の到着に時間を要するため、3Dプリンターの利点とも言えるラピッドプロトタイピングを実施するにあたって、リードタイムを許容する必要があります。製品開発のための試作であれば、リードタイムがあったとしても外注することで高精度な機材や本番環境に近い素材を使用できる利点がありますが、身の回りで使う小物程度であれば自前の設備にて造形する方が、軽い気持ちで試作・改良を回すことができて良いのではないかと思います。
外注した造形物の外観
以下、展示会用に作成した光無線通信機器の筐体 (DMM.makeナイロン素材、自前で染色) の写真を載せて今回の記事を締めます。