LED通信事業プロジェクト エンジニアブログ
展示会機材準備の心得
記事更新日 2024年9月3日
はじめに
弊部が執務室として使っている部屋を別用途に使いたいということで、急遽荷物を次の執務スペースや倉庫に移動させることになりました。
荷物の中でも展示会向けに調達した機材が大量にあり、どうせ移動させるなら他部門との機材共用を目的としてジャンルごとに分けながら収納しています。おかげで単純な移動よりもずいぶん時間を消費してしまっていますが……
LED通信事業PJは部門として独立する前から数多くの展示会に出展しており、社内としては展示会経験値はトップクラスであると自負しています。マーケティング戦略等は専門の方に任せるとして、展示機材を準備する際には何に気をつけているのかまとめておくことで、社内的には機材貸出時に一次対応をする筆者の負担軽減を目的とし、社外的には出展経験の少ない方の参考になればと思い、記事として取り上げることにしました。
展示機材の確定
展示する機材の準備に移る前に、展示ブースで何を伝えたいのかを明確にしましょう。
多少マーケティング方面とも被る内容かもしれませんが、機材を準備する側としても伝えたい内容は押さえておく必要があります。手元の商材についてあれもこれも見せたいと考えがまとまらないまま展示機材の準備に進んだところで、受け手にとって何を見れば良いのかわからない、ごちゃごちゃとしたブースが出来上がるだけです。抽象的な表現にはなりますが「〇〇という機材の△△機能について見せることで□□な環境が実現できることを来場者にアピールする」と見せたい内容を明確にすることで、展示機材の見せ方が散逸せずにまとまります。あれもこれも、という内容は喋りの方で伝えれば良いのです。
伝えたい内容が固まったら、アピールしたいポイントに合わせた機材を集めます。
LEDBackhaulを例にすると「無線通信装置ですが1区間あたりの遅延が最大2ms未満の低遅延なNWを構築できる」というのが伝えたい内容です。来場者側に向けたカメラの映像データをLEDBackhaul越しに伝送し、来場者の動作がほぼ遅延なくモニターに表示される、という展示を行い低遅延である旨を直感的にアピールします。そのため、HDMI出力可能なアクションカメラ、HDMIをEtherに変換したりその逆を行うHDMIエクステンダーと呼ばれる機材を組み合わせた展示を準備することが多いですね。
この場合、LEDBackhaulを2台、LEDBackhaulを机上に展示するための台座を2台分、アクションカメラを1台、アクションカメラ用のミニ三脚を1台、HDMI ExtenderをTx・Rxで各1台ずつ、映像表示用のモニターを1台、以上が最小構成となります。当然これらの機材を動かすためには電源も必要になるので、次章ではそちらについても触れていきます。
機器構成図の作成
機材が集められたら、使用する機材と機材間の接続を図示した機器構成図を作成します。
動作環境を作る前、もしくは先に動作環境を作った後、どのタイミングで図に起こしても良いのですが、とにかく機器構成図を作成して、機器間の接続を明確にしておきます。図を作成することで必要なケーブルの本数やプラグの個数がわかりますし、出荷機材のチェックリスト作成や他のメンバーが機材構成を把握する際の助けにもなります。
実際に機器構成図を作成してみると、電源用のコンセントの必要口数が膨れ上がっていて、電源タップが何個必要なんだ!?という気持ちにさせられることが多々あります。
前章の標準構成ですと、LEDBackhaulで2口、アクションカメラで1口、HDMI Extenderで2口、モニターで1口、合計6口が必要です。出荷する際に大量の電源が必要ですし、隣り合うプラグや直挿しのACアダプターが干渉して6口タップを使用しても収まらないこともあるので、展示会用にモニター以外の電源を一纏めにできる電源を自作しました。異なる電圧を吐けるスイッチング電源を使って、DC12V・5V系統の電力を一括供給します。
自作せずとも、例えばUSB給電の機器については、ポート数の多いACアダプターを調達すれば電源をまとめることができます。USB Type-Aからバレルコネクターに変換するケーブルも売られていますし、荷物一式から機材を取り出す際の探す手間を省けたり、電源プラグの干渉問題やケーブル取り回しが楽になります。
管理する物品が多くなるほど取り回しの悪化や確認漏れに繋がりやすいので、アイディアを駆使して現地に持ち込む物品は極力減らしたいところですね。
機材の動作確認
展示機材を組み合わせた動作確認は、現地で動作しないトラブルを避けるために必ず行います。
これまでの経験から「実際に展示に用いる機材を用いて動作確認を行う」ということが最重要事項だと筆者は考えています。何を当たり前のことをと思われるかもしれませんが、展示に用いる機材の対象にはLANケーブルや電源タップといった軽微な機材も含みます。
会議室や机に電源タップがあるので電源供給元として流用したところ、展示会場への電源タップ持ち込みが抜けてしまい接続口が足りなくなった。動作確認と違う電源タップを現地で使ったところ、接続口の向きが違っていたためにACアダプターが干渉してしまい、口数としては足りているのに繋げなかった。執務用に使っていたディスプレイと展示用ディスプレイでは発色が全く違っていた。ツメが折れた、もしくは内部で断線している不良LANケーブルを持ち出していた、という事態が発生する可能性があります。
スイッチングハブ等のNW機材を扱う際も、ポートによって設定を変更していたため、動作確認時と現地で異なるポートに接続するとうまく動作しなかった、という障害が発生することも考えられるので、動作確認を行ったポートにはマーキングしておくべきでしょう。LANケーブルについては動作確認を行っていても運搬中に破損する可能性は0ではないですが、実際に展示する構成や接続で動作確認を行って現地へと持ち込むことが、無用なトラブルを避けることに繋がります。
電源タップ忘れは、慣れない内は本当にやってしまいがちなんですよ……会場側でのレンタルがあったり、買っても安いものなので付近の家電量販店で調達すれば済む話なのでまだマシですが……
また、悲惨なのが外で調達の難しい機材を忘れた場合で、会社に取りに戻るか社内に残っている人員におつかいを頼む他なく、設営時間を大きくロスしてしまいます。例えば、HDMIケーブルは基本的にどこでも調達可能ですが、ケーブル長が伸びると店舗で取り扱いが無い可能性が高まります。今回の機材構成に含まれるHDMI-Micro HDMIケーブルですと、どこでも調達可能かと言われると微妙なところです。HDMI-MiniHDMIケーブルという種類のケーブルも同様で、両端のコネクター形状が異なるケーブルはとくに注意が必要です。
とにもかくにも機材を流用せず展示会用のものを用意し、動作確認に用いた一式で荷造りするということを意識していただけると幸いです。
見栄えの調整
動作確認が済み、日程に余裕があれば会社に機材が残っている間に、現地でどの位置に機材を配置するのか、見栄えの調整を行います。
会場で用意される卓の寸法を元に机にマーキングし、その範囲内で機材を展開することで展示会場での見た目に近い環境で、機材の配置を練り上げることができます。余剰ケーブル長を捌くことを考えると、ケーブル長をもっと短いものに変更した方が良い、モニターの下にはスタンドを設けて高さや角度を調整したほうが良い、機器動作状況を表示するディスプレイの画面サイズを変更した方が良い、といった見栄えの面については、実際に機材を展開してみないとわからない部分でもあります。時間がないのでぶっつけ本番ということもあるかと思いますが、可能な限り事前に検討した方が現地で配置に悩む時間も必要ないですし、設営中によりよいアイディアが浮かんだ際に実現する余裕も生まれます。
意外とやってしまいがちなのが、機材の展開に気を取られてカタログを配置するスペースが無かった、というような初歩的なトラブルです。事前に検討できればそのような問題を排除することができますし、可能な限り会場を想定した環境での検討が望ましいですね。
場合によっては、配置を見直す過程で機器構成を見直すこともあります。先述した持ち込む物品を減らしたいという話にも関わるのですが、LEDBackhaulは前に向かってフランジ形状となっているため、そのまま卓上に置くと上向きになります。従来はミニ三脚の上に乗せていたのですが、物が増える問題や高さがあってモニターとの干渉が気になることもあり、底面に専用設計の台座を設けることにしました。高さを抑えつつ機器が水平を向くようになり、スッキリした見た目になりました。これも見栄えの調整の一つですね。
専用設計としなくても、厚みのあるゴムブロックを本体下に入れて角度調節する等、機材展示に流用できる物品は色々あるかと思います。この機材はこのようにしか置けないんだ!と固定観念に囚われず、センスの問われるところではありますが、見栄えが良くなるような置き方を検討できれば幸いです。
あると便利なグッズ
機器構成関連とは別途、あると便利なグッズです。機材そのものとは異なりますが、見せ方にも関わってくる物品なので、まとめて荷造りしてしまうのであればということで、以下にリストアップしました。
・掃除用具
ブース内や卓上は設営に伴うゴミや人の往来によって意外と汚くなるので、その対策としての掃除用具です。
大きいブースだと朝一にコードレス掃除機で掃除しているところも見かけますし、小規模ブースでもゴミ袋複数枚やコロコロ、アルコールティッシュは最低限用意しておいて、きれいな状態を保ちたいところですね。
・卓上カタログスタンド
卓上に平積みするのではなく、来場者に対して見えやすい角度で設置できる卓上カタログスタンドです。
ストックを兼ねてまとまった数のカタログをスタンドに立ててお見せできるので、展示会必須用品の一つとなっています。三技協公式Xの展示会出展告知ポストに卓上カタログスタンドが映り込んでいたりします。後述する機材用アクリルスタンドもsXGP端末展示用に使用されていますね。
・床置きカタログラック
複数種類のカタログを設置できる床置きのカタログラックです。
縦に複数種類のカタログを並べて省スペースで設置できるので、来場者の方が手に取りやすいよう、ブース端の前側によく置いています。およそ人一人分のスペースを専有するので、ブース内で置き場所を優先的に確保しておきましょう。
・白布
設営や開催時間終了後、翌日まで機材に被せておく目隠し用の布です。
先輩社員から余っていた白カーテンを譲り受けて活用しています。機材に被せられるサイズであれば目的は達成できるので、無地白布でなくとも柄物でも多少傷んでいても良いかと思います。
・機材用アクリルスタンド
カタログではなく、機材を見えやすい角度で立てられる機材用アクリルスタンドです。
薄く軽いものを展示するのであれば、百均でも購入できるスマホスタンドやタブレットスタンドを使用するのもアリです。このアクリルスタンドは機材を受ける部分が平面なので、スマホやタブレットよりも厚みがあるものにも対応しているので、例えばWiFi APを置くことも可能です。
・写真用アクリルスタンド
こちらは2枚のアクリル板の間に書類をは挟んで立てることができる写真用アクリルスタンドです。
実際には写真ではなく、来場者に動作中の機材構成や機材の仕様を記載した紙を挟んで見せる際に使います。下図ではかなり昔のものですが、機器構成図を挟んでいます。
まとめ
以上、展示会機材準備の心得、です。
荷物移動で大量の展示会機材に触ったり、8月に展示会出展協力をしていた関係で、これは忘れないうちにまとめておかないと、という気持ちで書き上げた単発記事でした。展示会準備というとマーケティング関係の記事をよく見かけたので、機材を準備する側のエンジニア目線でお届けできたのではないかなと思います。
色々書きましたが、今回の記事で最も伝えたかったのは、過去の自分への反省も込めて「実際に展示に用いる機材を用いて動作確認を行う」という部分です。展示会対応は展示会場という普段と異なる場所での業務なので、どれだけ注意していてもミス・トラブルというのは起こりがちな環境です。その中でも可能な限りミスを減らすための対策として、上記内容を心に留めておいていただければ幸いです。
それでは、今回の記事もご拝読いただきありがとうございました。