LED通信事業プロジェクト エンジニアブログ

夏休み企画 マウス修理

記事更新日 2024年8月13日


はじめに

世間はお盆休み期間中ですので、普段よりもライトな話題を執筆しようと考えている際にふと気づいてしまいました。マウスの左クリックの反応が恐ろしく鈍ってしまっていることに……
静音ボタンが搭載されたマウス、Logicool M590GTを使用しています。4年以上使っているのでヘタってきてもおかしくはない時期で、ボタンを奥まで押し込まなければ反応しない、ドラッグアンドドロップ中に勝手にクリックが外れる、といった使い込んだマウスの典型的な劣化症状が現れています。
保証期間はすでに切れ、製品も生産終了している模様。Unifyingで接続したいので後継のM650への更新は気が進まず……となれば、休み期間にできそうなちょっとした工作で修理してしまおう!というのが今回の記事の趣旨です。

注意事項として、くれぐれも自己責任での作業をお願いいたします。

fig.1
調子が悪くなってしまったマウス

マウス不調の原因

有線・無線を問わず、使い込んだマウスはボタンの感度が鈍る症状が起こりがちです。
マウスの内部基板には小型スイッチが配置されているわけですが、スイッチの接点が使用に伴う劣化を起こして操作性の悪化に繋がってしまいます。代表的な症状がチャタリングで、接点が高速にON・OFFを繰り返してしまい、操作者の意図した1クリックの操作に対して、意図しない複数のクリック操作が行われてしまいます。例えば、1クリックのつもりがダブルクリック扱いになってしまった、ドラッグアンドドロップ中にクリックが勝手に外れていたり勝手に再度クリックした扱いになっていた、という現象が発生します。

それでは、今回の不調もチャタリングが発生しているかというと、どうも異なる症状が見られました。ドラッグアンドドロップ中に勝手にクリックが外れる症状はありますが、そもそもクリック操作を行う際に指をぐっと押し込むように力を加えないとクリックとして認識されないという症状です。
チャタリングというよりも、スイッチ内部の摩耗が進んで接点が接触できなくなっている可能性が高いと判断しました。機械的構造としての寿命を迎えている線が濃厚ということで、新しいスイッチに交換する方向で修理を行います。

マウスの分解

スイッチがはんだ付けされている基板を取り出すため、マウスを分解していきます。
ネジ止め箇所は本体底面、電池カバーを外してUnifyingドングルを差し込む部分の奥に1本、+のタッピングビスがあります。奥まった箇所なので少し長めかつ細めのドライバーを用いて外します。
写真ではシリアルナンバー目隠しのために電池が残っていますが、分解作業に入るまでに外しておいてください。

fig.2
ネジ止め箇所

タッピングビスが外せたら、外装を開いて上下に二分割します。まずはマウス後部を上下に開き、次にマウス前部はツメで引っかかっているので、下側を後部に引くようにして外します。
上部にはサイドボタン用のサブ基板が実装されており、下側のメイン基板との間には配線が通っています。上下に分割する際には配線を引っ掛けないよう注意しましょう。

fig.3
外装を外す

外装を上下二分割できたら、メイン基板からサブ基板へ繋がる配線を取り外しておきます。コネクターが奥まっていて指だけでは外しづらいので、周囲の部品を破壊しないように慎重にピンセットペンチやマイナスドライバーで抉って外しました。

fig.4
コネクターを外して上下に分割

コネクターを外すと下側が独立した状態になって様々な作業が行いやすくなります。メイン基板のネジ止め箇所は3箇所、+のタッピングビスがありますので、これらを外しつつホイールアッセンブリも外しておきます。ホイールはマウス前側のツメで引っかかっているので、上側に引き上げれば外すことができます。小さなスプリングがホイールアッセンブリ底部に装着されているので、紛失しないように注意です。

fig.5
基板固定ネジとホイールを外す

基板固定ネジを外したらメイン基板を外装から外せる状態になります。まずは基板の底面側を表に向け、スライド式電源スイッチ用の部品があるので外しておきます。

fig.6
外装から外した基板と電源スイッチ部品の除去

スイッチの交換

基板だけの状態になったのでスイッチ交換……といきたいところですが、現時点でスイッチの感度がどの程度悪くなっているのか確認しておきます。
マイクロミュートスイッチ等の名称で販売されている新品のスイッチを取り出して、2本のリードにテスターのプローブを接触させます。テスターを導通確認モードにし、プローブで机側にスイッチを押し付けることで指で押した状態を再現します。動画はとくに無いのですが、スイッチのコツッという押下した感触が得られると同時にテスターからは導通を示すビープ音が鳴りました。
既存の反応が鈍っているスイッチでも確認しますと、コツッという感触が得られた段階ではビープ音が鳴りません。もう一弾押し込んでようやく音が鳴る状態でした。やはり内部の接点部分が新品スイッチよりも摩耗しているためと考えられます。何度繰り返しても同様の結果が得られたので、力を込めて強く押下しないと反応しない様子が改めて確認できました。

fig.7
新品/既存スイッチの動作確認

それではいよいよ新品スイッチへの交換開始です。
既存スイッチは基板にはんだ付けされているので、はんだを除去する必要があります。筆者は写真のはんだシュッ太郎NEO (こちらピカピカの2台目) という加熱式はんだ吸取器を使ってはんだ除去作業を行いました。はんだ加熱をしながらポンプで吸い上げができるので、簡単確実に作業ができてオススメです。
はんだ吸取器のコテ先をはんだに当てやすくするために、既存スイッチのはんだ付け箇所に追加ではんだを盛る下準備をしておきます。すぐに除去するので芋はんだで十分です。

fig.8
はんだ吸取器と下準備

電源を繋いで加熱したはんだ吸取器のコテ先をはんだ付け箇所に当てて溶融し、ポンプ開放ボタンを押してはんだを吸取ります。
スルーホールとリードの間に余分なはんだが残っていないことを確認して、既存スイッチを引抜きます。左右クリック用のスイッチが綺麗さっぱり基板から外れました。
あとは同じ箇所に新品スイッチを挿入してはんだ付けを行います。基板には背の高い部品が実装されているので、スイッチには数mm分の下駄を用意してあげるとはんだ付け作業がより簡単に行えます。写真では2mm厚のアクリル板端材を用いています。リード部品なので、はんだ吸取りもはんだ付け作業も楽チンです。

fig.9
はんだ吸取り作業と新品スイッチはんだ付け

スイッチのはんだ付けが完了したら、上記手順の逆を行ってマウスを元に戻していきます。
基板底面側のスライドスイッチ装着、サブ基板のコネクタ接続が忘れがちな点かと思いますので注意しましょう。最後に上面を装着する際は、前側のツメを引っ掛けてから下面と合体させてネジ止めです。

修理後の動作確認

スイッチ交換作業が完了したということで、早速マウスに電池を入れてクリックが正常動作するのか確認します。
ツールを使って確認するわけではなく、ただ単純に普段の操作を行うだけですので、とくに説明も何もありませんが……
スイッチ交換作業が完了したマウスボタンは、奥まで力いっぱい押し込む必要はなく、小気味よくクリックするだけで反応し、ドラッグアンドドロップ中にも勝手にクリックが外れないことを確認しました。

実は本記事執筆の約1ヶ月前、クリック感度低下が気になって分解清掃を行っていました。その際は清掃とともに接点復活剤をスイッチに塗布したのですが症状が改善しなかったため、今回記事にしたスイッチ交換を決意したのでした。
この記事の執筆中も修理したマウスを使っていましたが、クリックする機会は非常に多いので新品スイッチによる作業効率が向上 (元通りとも言いますが) は絶大です。

まとめ

以上、夏休み企画 マウス修理でした。
夏休みの自由研究的な内容として、簡単な作業でスイッチを交換してみました。保証期間が切れたマウスであれば修理に失敗しても新しい製品に買い替えるだけですし、スイッチ単体は数十~数百円で入手できるので、修理経験のない方でも挑戦してみる価値はあるのではないかと思います。

それでは、今回の記事もご拝読いただきありがとうございました。