LED通信事業プロジェクト エンジニアブログ
meviyに部品製造を依頼
記事更新日 2024年6月4日
はじめに
以前アカウント登録したまま発注まで進められていなかったmeviyにて、板金加工、切削 (角物) の2種類の部品製造を依頼したので、サービスを利用してみた際の感想を記していきます。
meviyは大手業務向けECミスミの運営で知られる株式会社ミスミグループ本社が提供するオンライン部品製造サービスで、3DCADデータをアップロードしてWEB上で部品製造のオンライン見積もりが可能です。ものすごく個人的な感想ですが、外注3Dプリントサービスで使用しているDMM.makeの板金・切削加工版という印象ですね。
今回は初利用のサービスで部品を作りましたという報告なので、あっさりした内容でササッと読めるかと思います。それでは今週もよろしくおねがいします。
部品1-板金加工
早速、板金加工で作った部品の写真を以下に示します。
現在開発中の光無線通信基板に合わせて作ったレンズマウントで、長辺方向には曲げを入れて部品全体が反らないようにしてあります。Fusion360上で設計中の同部品は以下の図の通りです。
当然ですが、寸法は問題なく仕上がっています。
また、目的外利用禁止とのことでこちらにはアップできませんが、3DCADデータを元にした図面も納品時には添付してありました。
板厚t=1.5、アルミ (A5052) 、表面処理なしとしていたので標準出荷日は3日で、納期的には非常に速くて助かりますね。極少数の2個しか注文していないのですが、なんと若干のボリュームディスカウントあり。なんと至れり尽くせり……
一部の穴はバーリングタップを指示して直接ボルトを受けられるような構造で検討していましたが、マウントに取り付けるレンズ位置を色々試す際の配置を考慮し、全て通常の貫通穴としました。バーリングタップを指示する際は穴部分にパイプ状の出っ張りを3DCAD上で設ければ、オンライン見積もりの際にバーリング箇所・方向を自動で認識してくれます。
細かいルールはバーリングタップのモデリングルールとしてまとめられています。板圧1.5mmで設計していたので、この場合はパイプ壁面の厚み・高さは共に1.5mm以下に収める必要がありますね。A5052の場合、板厚にもよりますがタップはM3・M4・M5の最大3種類に対応しています。
今回作った部品を用いてラボ検証を行った後、長期試験等に持ち込む際には、バーリングを反映した本番用部品として再度製造依頼を投げるかもしれません。
部品2-切削 (角物)
切削で作った部品の写真を以下に示します。
こちらも現在開発中の光無線通信基板に合わせて作った部品で、ファンの通風孔を設けた基板の取り付け板として機能します。Fusion360上で設計中の同部品は以下の図の通りです。
板金同様、寸法は問題なしです。
タップ穴は3DCAD上でネジ形状を盛り込むのではなく、通常の穴として設けてmeviyにアップロードします。オンライン見積もり画面上で穴の処理を指定することで、タップ処理・未処理を切り替えられます。穴径によっては自動でタップ処理をする穴だと認識されます。意図しない自動認識の場合、タップ指定を解除していくことも可能です。
切削部品の穴の自動認識については各種穴の認識条件にまとめられています。
ファンの通風孔としてΦ38の大きな穴や多数のM3タップ穴を設けたため、さすがに普段使っている卓上工作機械と手工具では手間がかかって仕方ない構造をしていたので、良い機会だと思ってレンズマウントと共に製造を依頼してみました。こちらの部品は板圧t=6、アルミ (A5052) 、表面処理なしの切削加工で標準出荷日は6日でした。板金の3日には劣るものの、これでも十分速いです。
また、上記板金・切削の2種類の部品について、3DCADデータをアップロードするだけでオンライン見積もりができるので、図面を作成しない図面レスで発注することができました。
公差の指示等図面があった方が良い点もあるので、あらゆる部品発注を図面レスにするのが良いわけではないのですが、筆者のように公差を追い込んだ部品をつくっているわけではない場合、図面を作らず即見積もりに移れるのは非常~~に時間を削減できるのでありがたいところです。Fusion360上でいくらシームレスに3Dから2Dに移行できるといっても、2Dで図面を作るのは3D側を作り込むのとは別の作業なので、どうしても時間が掛かってしまいます……
そういう意味では、多少部品代金が高かったとしても、図面作成時間分を削ったことでトータルの価格としては抑えることができるのかもしれません。
使ってみた感想
今回作った部品は手のひらサイズで比較的小型、加工箇所もそこまで多くないということもあってか、板金部品・切削部品ともに最短納期での出荷となりました。
「製造業DXで時間価値を創出」と掲げている通り、3DCADデータを投げてオンライン見積もり、納期も短いとなかなか便利な部品製造サービスであることを実感しました。
標準納期の他に、割増料金で短納期化、逆に長納期化で割引に対応しています。今後、検証用途で3Dプリンター部品では目的を果たせない場合に利用することが考えられますが、料金よりも納期重視なところがあるので、納期を延ばして割引は使わない可能性が高いですね……
なにせ標準出荷日が20日以降となってしまうので筆者のような検証用ではなく、在庫を見ながら補充したいという用途向けかと思います。
また、事情は推測できますが、加工限界が攻めない方向で設定されているのは注意すべき点かと思います。
普段の金属加工業者に依頼するときの感覚で設計した3DCADデータをアップロードしたところ、オンライン見積もり画面でエラー表示が出ました。穴位置が部材端に寄り過ぎているから加工できない、とのこと。
幸い、狭い範囲に加工箇所を詰め込まざるを得ない構成ではなかったので、部材端端の寸法を広げることで穴位置を部材端から離しました。多少完成物の寸法は大きくなりましたが、対処できるレベルの修正で済んで一安心です。
そもそも最初から加工限界を確認しておけという話なのですが、おそらくオンラインで見積もりを完了できるように、寸法には余裕を見ているのだと思います。
2024年6月現在、ユニファイねじ(UNC/UNF)/インチねじは非対応とのことで、ここは素直に残念なポイントですね。
我々の光無線通信機器は三脚に取り付けて仮設することが多く、製品であるLEDBackhaulには底面にUNC1/4の雌ネジを設けてあります。今もそうですが、筐体を作り込んでいない試作機の状態では、同規格のナットを3Dプリンターで作った台座に埋め込み、台座を介して三脚と通信機本体を結合して検証環境を構築しています。手工具でタップを切ることもできるのですが、将来的にmeviy上で直接UNC1/4のタップ指示ができるようになれば工数が削減できてありがたいな、という気持ちです。
まとめ
以上、meviyに部品製造を依頼でした。
図面レスでの発注はインパクト大で、とにかく楽に速く進められる上に納期も短いため、重ねてになりますが非常にありがたいサービスであると感じました。
他にも部品を製造する用事ができた際には、段付きで彫り込んだ形状等、色々試してみたいですね。