LED通信事業プロジェクト エンジニアブログ
USB Type-CでDCファンを駆動させる接続基板をKiCadで設計-フットプリントの自作
記事更新日 2025年1月21日
はじめに
前回記事では、ACアダプターの電力をUSB Type-C 変換基板を介してDCファンに供給し、駆動させる実験を行いました。
実験構成のままではコネクター接続箇所が空中に浮いていて扱いづらいので、コネクターを介してファンに電力供給するための接続基板をKiCadで設計します。
今回は基板全体の設計に移る前の準備として、KiCad標準ライブラリに含まれないコネクターのフットプリントを自作する方法について記します。
KiCAD ver8
2024年1月の記事以来のKiCad操作ということもあり、バージョン確認をしてみるとver8安定版に更新されている模様。せっかくですので最新版へ更新しておこうということで、DLページからOSに適したインストーラーをDLします。2025年はver9へのアップデートも控えているようです。
インストーラーのDLが完了次第、KiCad ver8をインストールして起動します。2024年中頃に業務PCが更新された際、設定ファイルや自作シンボル・フットプリント等のデータ移行を忘れていたので、また一から始めることに……
気を取り直して、KiCadが起動したら新規プロジェクトを作成します。後述しますが、ファンを2個接続するのでプロジェクト名を「FANx2_PCB」としました。
設計する基板
今回設計する基板のイメージを以下に図示します。
DC5Vの入出力用に2.5mmピッチのコネクターを基板表面に3個、ファン動作のON/OFF制御用にスライドスイッチを基板裏面に1個実装します。また、基板の取り付け穴としてΦ3.5mmの穴を2個設けます。
KiCadデフォルトの状態ではスライドスイッチに適合するフットプリントが見当たらなかったので、回路設計を行う前にフットプリントを自作します。コネクターはXHコネクター相当の製品で、こちらは標準ライブラリに存在したのでそちらを利用します。
フットプリント作成のために、まずはスライドスイッチの採寸を行います。
フットプリントの自作
採寸が完了したらKiCadのスタート画面に戻り「フットプリント エディター」をクリックします。
今回設計に用いる部品はミリ単位ですので、フットプリントエディター画面が開いたら忘れないうちにグリッドをデフォルトの2.54mmから0.1mmに変更しておきます。
グリッドの変更が完了したら、画面左上「新規フットプリント」をクリックし、展開したサブウインドウにてフットプリント名を「SW_slide_p2.5mm_3pin」(スライドスイッチ、ピッチ2.5mm、3ピンの意味)と入力し、フットプリントタイプを「スルーホール」に変更してOKをクリックします。
画面右側「パッドの追加」をクリックし、画面上に2.5mmピッチで3個のパッドを配置していきます。
この際、画面下部の座標を参考にしながら配置すると、今後位置を整える際の作業を省略できます。まずは1個目のパッドをX・Y座標共に0の中心点でクリックして配置します。
次に、Xが0、Yが-2.5となる座標でクリックし、2個目のパッドを配置します。さらにXが0、Yが2.5となる座標でクリックし、3個目のパッドを配置します。真ん中→上→下という順番でパッドを配置しました。3個のパッドが配置できたら、パッドの追加作業は完了です
パッドの配置が完了したので、パッドのプロパティを編集してスルーホールとランドの直径を指定します。
コネクターから伸びるリードは縦横0.5x0.3mmの長方形断面をしており、約0.6mmのスルーホールがあればリードを通せるのですが、余裕をみて1mmのスルーホールを設けることにします。
また、ランドの直径は2mmとします。このあたりの寸法は、使用するはんだごてのコテ先形状や、どれだけ高密度に部品を配置するかによって最適な値は異なってきますので、お好みの値を入力してください。
上記の数値入力を行うため、画面右側の矢印アイコン「アイテムの選択」をクリックし、先ほど配置したパッド1上で右クリックします。展開したメニューの中から「プロパティ」をクリックします。
「パッドのプロパティ」が開くので、まずはパッドの座標を示す「X位置:」と「Y:」がともに「0mm」となっているか確認します。ズレている場合は両方とも0mmにしておきます。
次にランドの指定としてパッド形状を「円」にし、直径を「2mm」と入力します。スルーホールの指定は穴形状を「円」にし、直径を「1mm」と入力します。全て入力が完了したら「OK」をクリックして編集を完了します。
パッド2も同様にプロパティを展開し、パッド形状を円・直径を2mm、穴形状を円・直径を1mmと入力します。パッド1から上に0.25mm離れた箇所に設けるため「X位置:」と「Y:」はそれぞれ「0mm」と「2.5mm」になっているか確認します。パッド3も同様に直径2mm・1mmの入力を行い、パッド1から下に0.25mm離れた箇所として「X位置:」と「Y:」がそれぞれ「0mm」と「2.5mm」になっているか確認します。
パッドのプロパティ編集が完了したら、コネクター外周の位置を示すシルク印刷箇所を作成します。
画面右側「矩形を描く」をクリックした後、画面上の適当な箇所で1度クリックし、カーソルを動かした後に2度目のクリックを行い四角形の描写を完了します。後ほどプロパティ編集で細かい位置指定を行うので、この段階ではなんとなく四角形が配置できていればOKです。
それでは、四角形のプロパティ編集を行い、各部寸法を詰めていきます。
パッドのプロパティ編集と同様に「アイテムの選択」をクリックし、四角形の上で右クリックメニューを展開し「プロパティ」をクリックします。
矩形のプロパティが展開したら、始点と終点の座標を指定します。指定する値は、採寸したコネクターの寸法を元にリード中央=パッド1を原点として割り出します。各値と入力する箇所の対応は下図の通りです。
各値の入力が完了したら「OK」をクリックします。これでコネクター外形のシルク印刷箇所が指定できました。
シルク印刷の編集として、パッドと位置が被っている「REF**」という印字を移動させます。
アイテムの選択をクリックした状態で、画面上のREF**をドラッグアンドドロップし、コネクター外周の外に追い出します。
ここまでの作業が完了したら、仕上げとして作成したフットプリントのイメージ図を表示してみます。
画面上部の「表示」をクリックしてメニューを展開し「3Dビューアー」をクリックします。作成中のフットプリントを元にしたイメージが表示されるので、視点を変更しながら意図した通りの構成となっているか確認しましょう。
自作フットプリントの保存
3Dビューアーでの確認が完了したら、作成した自作フットプリントを保存します。
画面上部「ファイル」をクリックしてメニューを展開し「保存」をクリックします。「フットプリントに名前を付けて保存」という画面が開くので「新規ライブラリ」をクリックします。
「ライブラリ テーブルへ追加」という画面が開くので「グローバル」を選択した状態で「OK」をクリックします。今回作成中のプロジェクト以外でも流用できるフットプリントとして登録できます。
先程の操作にてファイル名入力画面が開いたら、お好みの保存場所や名称を指定して「保存」をクリックして、新規ライブラリの作成を完了します。とくにこだわりがなければデフォルトのままで大丈夫かと思います。
「フットプリントに名前を付けて保存」の画面に戻ってきたら、新規作成したライブラリ (記事の環境では「Library」) を選択した状態で「OK」をクリックします。
これで新規作成したライブラリに自作フットプリントを保存することができました。
次回以降、新規フットプリントを保存する際は今回作成したLibraryに溜めることもできますし、部品の特性に応じてコネクターや抵抗といった機能ごとのライブラリを作成して管理することもできます。
フットプリントエディター画面に戻りましたら、画面左側のライブラリ一覧を確認します。
標準ライブラリの中に新規作成した「Library」が表示され、内部には「SW_slide_p2.5mm_3pin」が格納されている様子が確認できます。
これでフットプリントを自作する一連の作業が完了しました。画面右上の✕をクリックしてフットプリントエディターを閉じます。
まとめ
以上「USB Type-CでDCファンを駆動させる接続基板をKiCadで設計-フットプリントの自作」でした。
フットプリント自作については簡単な形状なのですぐに終わると考えていたのですが、思いの外文章が長くなってしまいました……基板の設計まで進めるつもりでいたのですが、フットプリント自作が完了してちょうど良い区切りとなったので、基板全体の設計は次回に持ち越します。
次回記事では、KiCadにて自作フットプリントを使った基板設計を行います。
それでは、今回もご拝読いただきありがとうございました。